東日本大震災の犠牲者への鎮魂の思いを込めたアートプロジェクト「時の海-東北」を構想する現代美術家の宮島達男さん(66)=茨城県守谷市=が22日夜、南三陸町の震災伝承施設「南三陸311メモリアル」でワークショップを開いた。参加した町民ら40人は自分にとって大事な数字を考えながら、震災からの12年半に思いをはせた。
「時の海-東北」は、9から1へと数字がカウントダウンを繰り返す発光ダイオード(LED)装置を命に見立て、3000人分を水槽に浮かべる構想。LEDの点滅が命の輝きを、異なるカウントの速さが命の個性を示す。
ワークショップでは参加者が思い思いにカウントの間隔の秒数を設定。「震災でかけがえのなさを感じた家族の誕生月を足し合わせて『22秒』」「大病と診断され、限りある命を大事にしようと考えた日にちなんで『8・6秒』」などと、数字に込めた意図を周囲と語り合った。
町内の入谷八幡神社宮司の榊拳秀さん(29)は「0・5秒」。高校1年だった震災当日の夜、避難所で1個のおにぎりを半分に分けて食べた記憶を振り返り「震災の教訓、食べ物のありがたみを忘れず生きていきたい」と話した。
宮島さんは2015年から石巻、仙台両市などでワークショップとアート制作を続ける。最終的に長さ40メートル、幅25メートルの水槽にLEDを浮かべる計画の大型アートは27年の完成を目指し、東北沿岸を念頭に場所選びを進めている。
宮島さんは「一人一人の大事な時間を預かることができた。アートを見に来た人が大切な人を思ったり、自分自身と向き合ったりできるような場所をつくりたい」と語った。