新型コロナウイルス感染拡大によって収入が急減した世帯に30万円を配る現金給付について、政府は5月中の支給開始を目指す。給付事務を担当する市区町村の地方議会で関連する補正予算が成立することが基本的に必要になるが、首長の専決処分による手続き迅速化を期待している。
安倍晋三首相は14日の衆院本会議で、緊急経済対策に盛り込まれた現金給付について「できるだけ多くの自治体で5月中にも給付を開始できるよう準備を進めている」と述べた。首相は「5月支給」方針を繰り返しており、政府・与党は2020年度補正予算案を今月下旬に成立させ、首相の「公約」実現に全力を挙げる。
ただ、国の予算が成立しても、実際の申請窓口となる市区町村の議会で関連する補正予算の成立が必要となる。その処理が6月定例議会に持ち越されれば、支給は夏にずれ込む。
制度設計に携わった政権関係者は「首相が『5月中』と言ってしまったので、いくつかの自治体には、尻をたたいて何としてもやらせる。連休明けには申請できるようになる」と指摘、首長による専決処分を想定していることを明らかにした。
専決処分は地方自治法に規定があり、議会招集の時間的余裕がない場合に首長が議会の議決なく決めることができる仕組み。6月議会に先立つ臨時議会の招集で対応する地方も多いとみられる。
ただ、首長の対応や議会の招集時期は異なることから、高市早苗総務相は10日の記者会見で、支給時期について「全国一律、何月何日からということにはならない」と認めた。