35坪1650万円 蔵工法で低コスト化

 宮城県内の設計事務所や工務店などでつくる県地域型復興住宅推進協議会は、標準価格を延べ床面積35坪(約115平方メートル)で税込み1650万円に抑えた住宅を商品化した。「蔵(くら)工法」と名付けた新しい工法を採用し、工期の短縮や高い強度を実現した。住宅の自主再建を目指す東日本大震災の被災世帯を主な対象に想定する。協議会は「地元業者が力を合わせて質の高い住宅を安価で提供し、復興を支援したい」と意気込む。
 新商品は総2階建てが基本。対象エリアは仙台、塩釜、石巻などの沿岸部が中心となる。
 標準価格には、食洗機付きIHキッチンやエコキュートといった設備のほか、通常は別料金のカーテンや照明代、設計代も含まれる。協議会は、2000万円以上の価格帯が多いハウスメーカーなどの同程度の住宅に対しても、価格競争力を確保できるとみている。
 低コスト化に成功した要因の一つが蔵工法だ。日本古来の土蔵を参考に、通常1メートル間隔の柱を50センチ間隔にすることで筋交いが不要となり、作業短縮につながった。人件費が高騰する中、工期は一般在来工法の半分以下の2カ月半となった。
 蔵工法の住宅は、協議会に参加する76グループのうち、多賀城市や七ケ浜町などの業者約10社でつくる「復興住宅仙台東グループ」が中心となって考案し施工している。
 同市で設計事務所を経営する代表の鎌田孝一さん(58)は「設備や建材の共同購入、良心的な工賃設定など、みんなの協力で低コストが実現できた。柱の接合部に金具を使うなど強度を高める工夫もしている」と自信を見せる。
 協議会はことし3月、七ケ浜町内に林野庁の補助金でモデルハウスを建て、蔵工法住宅の普及を目指している。これまでの受注件数はグループで約15戸にとどまり、知名度不足が悩みだ。
 協議会の松田純也専務理事は「資金面で住宅再建に悩む人にも喜んでもらえる住宅。建てた後のケアも地元業者はきちんと対応できるので、ぜひ被災地に普及させたい」と話している。
 連絡先は協議会022(223)7330。

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