新年度となる4月1日から暮らしを取り巻く制度などが大きく変わる。公的年金の支給額の伸びを物価や賃金上昇よりも低く抑える「マクロ経済スライド」が初めて実施されるほか、軽自動車税が増税される。食品の値上げも相次ぎ、家計の負担は重くなりそうだ。
直近の物価・賃金の上昇率2・3%増に対して、マクロ経済スライドを実施した平成27年度の年金支給額の伸びは0・9%増にとどまる。物価上昇分に及ばないため、年金の実質的な価値は目減りする。国民年金は40年間保険料を払い続けた場合に支給される満額で1人当たり月6万5008円(26年度比608円増)、厚生年金は夫婦2人の標準的な世帯で月22万1507円(同2441円増)になる。
27年度の国民年金保険料は月340円増の1万5590円になる。会社員の夫の退職時などに必要な手続きをせず、国民年金保険料が未納となった主婦らの「特別追納」も4月から開始。無年金や低年金を防ぐため、最大10年さかのぼり納めることができる。
介護分野は、事業者に支払われる介護報酬が全体で2・27%下がる。膨らむ介護費用を抑制するため、施設サービスを中心に幅広く減額する一方、在宅介護や認知症支援への加算を拡充してメリハリをつけた。介護職員の給料は月1万2千円増やし処遇を改善する。
報酬改定により、利用者は質の高い介護サービスを受ける場合、負担が増えることもある。同時に、8月からは一定の所得のある利用者は自己負担額が1割から2割に上がる。高齢化の進展に伴い、65歳以上の介護保険料は4月から月平均4972円から5550円程度に上昇する見込み。
医療分野では27年度分から国民健康保険料の年間限度額が81万円から85万円に引き上げられる。
また、4月1日以降に購入した新車の軽自動車税が増税され、自家乗用車は7200円から1万800円になる。自動車はエコカー減税の基準も厳格化され、新車購入時にかかる自動車取得税と、車検時などにかかる自動車重量税の負担が、ガソリン車は大半の車種で増える見通しだ。
食品関連の値上げも相次ぐ。牛乳、ヨーグルト、バターやチーズなど幅広い乳製品の出荷価格が引き上げられるほか、カゴメやキッコーマンがケチャップなどトマト加工品を4〜13%値上げする。
このほか、親や祖父母が子や孫にまとめて結婚・子育て目的の資金を贈与する際に、20歳以上の子や孫1人当たり1千万円を上限に非課税とする減税措置や、学術論文などの科学的根拠を国に届け出れば、食品の健康への効能を事業者の責任で表示できる「機能性表示食品」が新たに始まる。
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待機児童解消や子育て環境の充実を目指す「子ども・子育て支援新制度」が4月からスタートする。待機児童は平成26年4月時点で2万1371人。都市部は用地不足、過疎地は施設の統廃合が進んでいることを背景に、保育の受け皿不足が顕著となっている。
対応策として、新制度では0〜2歳児6〜19人を預かる小規模保育などの「地域型保育」を、新たに市町村の認可事業に加え、国が補助金で財政支援する。これまで保育所を利用する場合、選考基準は自治体ごとに異なったが、パートや求職中の保護者が一律に利用できるよう要件を統一。パートの保護者が利用しやすいよう、標準(11時間)より短い8時間での利用料も新たに設定する。
幼稚園と保育所を一体化した「認定こども園」の普及のほか、放課後に小学生児童を預かる「学童保育」を31年度までに30万人分拡充することも目指す。