5年後には新築マンション供給半減も…不景気による販売不振 衰退していく業界の現実

新築マンションが相変わらず売れていない。この販売不振はリーマン・ショック後の不況期以来ではないか。

 業界内では売れない原因は価格が高くなったことだと考えられているが、それだけではない。

 マンション購入の適齢期と考えられる30代や40代の人口自体が減少していることが大きい。

 団塊ジュニアの最後尾はすでに45歳に達している。しかも、44歳以下の層は就職氷河期世代に入っていく。彼らは住宅ローンが組みにくい非正規雇用で就業しているケースも多い。

 2019年の出生数は90万人を切る見通しであると、先日、厚生労働省が発表した。子供の誕生は住宅購入への強いモチベーションを生む。出生数が団塊ジュニア層の半分にも達しないということは、今後の住宅需要の増大など望むべくもない。

 マンションデベロッパー業界を見ていると、大手の財閥系などは住宅開発事業よりも、都心での市街地再開発などに経営資源を多く注ぎ込み始めたようだ。

 だが、住宅開発事業経営が中心の中堅デベロッパーは苦しい。高すぎて売れないにもかかわらず、惰性的に開発を続けても、いつかは行き詰まる。そのまま経営危機を迎える会社が、早ければ来年早々には現れそうである。

 そもそも、今までマンションを作り過ぎてきた。都心でも郊外でも、人が住んでいない住戸を多数抱える物件が増えている。

 まだはっきりとは可視化できないが、都心の中古市場では、高止まりしていた流通価格が下落に転じている。

マンション市場における今の局地バブルが始まったのは13年4月の金融緩和から。14年10月の「黒田バズーカ2」で一気に加速した。

 しかし、そろそろ息が切れてきたようだ。20年は五輪が開催されるが、消費税増税などによる景気後退も予測される。

 少なくとも、高止まりしている新築マンションが急に売れ出すなどということはない。それどころか、3月の年度末に向けて大胆な値引き販売が行われるだろう。実質的な値下がりである。

 その後数年、マンション業界は不景気による販売不振に苦しむことになる。供給戸数はさらに減少するだろう。

 5年後には首都圏における新築マンションの供給戸数は今の半分程度の2万戸前後になるのではないか。近畿圏は1万戸前後の可能性もある。

 つまり、業界は確実に先細っていく。その中で業界各社はどういう生き残り戦略を描くのかが問われる。

 大手なら他部門にシフトするのも可能だが、専業組はそうもいかない。他業種に手を広げるか、単に開発事業の縮小均衡を図るか。いずれにしても、厳しい展開が待っている。

 マンション業界は13年以降、普通に事業を展開していれば利益を出せていた。しかしこの先数年は、生き残りをかけた「苦難の行軍」を強いられる。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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