65歳まで雇用、企業猛反発「若者にしわ寄せ」

希望者全員を65歳まで再雇用することを企業に義務づける高年齢者雇用安定法改正案に対し、経済界が強く反発している。
 改正案は、より長く働いてもらうことで、年金制度を維持しやすくするのが狙いで、2013年度導入を目指す。経済界は、一律に全員再雇用を義務づければ職場の士気が下がり、人件費負担も膨らみかねないと訴えている。
 改正案は、労使が合意した場合は企業が再雇用対象者を選ぶ基準を設けられる現行規定を廃止する規制強化が柱だ。3月9日に閣議決定され、今国会に提出された。年金支給開始年齢の段階的引き上げによって、定年後に給料も年金も受け取れない人が出るのを防ぐ狙いがある。
 現在、企業は、定年後の再雇用を希望する社員に対し、健康状態や働く意欲、人事考課などを目安とする社内基準に沿って選んでいる。希望者の大半を再雇用しているが、厚生労働省の11年の調査によると、定年を迎えた約43万5000人のうち、1・8%にあたる約7600人は再就職が認められなかった。
 改正案で全員再雇用が義務づけられることに対し、「仕事に手を抜いても再雇用されるという雰囲気が広がり、社員の士気が低下しかねない」(高島屋人事部)などの懸念が広がっている。60歳以上になると、意欲や能力などの個人差も大きくなるためだ。製造業の海外移転に拍車がかかる中、雇用規制が厳しくなれば国内雇用の維持がさらに難しくなるため、「若年者の雇用を減らすなど若者へのしわ寄せが生じる」(自動車大手)との声も出ている。

タイトルとURLをコピーしました