<いじめ>放置は罪 疑わしきは認知を

いじめを早期に認知できるかが教育現場で問われている。東北ではことし、いじめを受けていた岩手県矢巾町の中学2年の男子 生徒(13)が自殺したのに続き、仙台市立中1年の男子生徒=当時(12)=が昨年秋に自殺したことが明らかになった。文部科学省は認知件数が少ない場合 には「いじめが放置されている懸念がある」として、積極的にいじめを認定するよう都道府県教委などに通知している。

文科省が全国の小中学校と高校を対象にした2013年度のいじめ調査によると、東北6県の認知件数と全国順位は表の通り。認知の度合いは県ごとに差があり、児童生徒1000人当たりの件数は最多の宮城と最少の福島で約58倍の開きがあった。
宮城県教委は「各校が細やかに調査している証し。件数の多さはマイナスと捉えていない」と説明。福島県教委の担当者は「きちんとした調査に基づいた結果と考えるが、漏れがないよう各校に注意を呼び掛けている」と語る。
教育現場はこれまで、いじめを認めたがらない傾向があった。矢巾町のケースでは、男子生徒へのからかいなどの行為を学校がいじめと判断しなかった。「校内にいじめが存在してはならないという雰囲気が積極的な認知を妨げた」(校長)ためだ。
こうした実態を受け、文科省が17日付で出したのが新たな通知。「認知件数が多い学校はいじめを積極的に認知し、解消に向けたスタートラインに立っていると極めて肯定的に評価する」とした。
積極的ないじめ認知に乗り出そうとしている例もある。大阪市と同市教委は25日、いじめ対策基本方針を策定。事実確認の前でも可能性があればいじめと見なすことを盛り込んだ。積極的な情報開示も義務付け、いじめの疑いを隠した職員を懲戒処分の対象とした。
仙台の男子生徒の自殺をめぐっては、第三者委員会が学校や市教委の対応などを検証。調査報告書で関係者間の情報共有の不足を問題点の一つに挙げた。
奥山恵美子市長は25日の定例記者会見で、大阪市の方針について「評価できる視点だ」と、いじめの早期認知につながると賛意を示した。
ただ男子生徒の自殺について、学校が生徒や保護者にいまだに説明をしていないことには「踏み込んだ公表を望まない遺族の気持ちに配慮する必要もあり、現時点では難しい」と述べるにとどまった。

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