秋田港名物「レトロ自販機」のうどん・そばの料金が9月1日から50円値上げされ、250円になる。40年以上にわたって、ずっと200円で販売し てきたが、自販機が老朽化して「治療費」(維持費)がかさむため、やむを得ず初の値上げに踏み切るという。ファンらは「長続きのためには仕方ない」と温か く受け止めている。【山本康介】
この自販機は1973年ごろ、秋田市土崎港西1にあった佐原商店の軒下に置かれた。真冬も吹きさらしの中、24時間営業であつあつの天ぷらうどんやそばを提供し、市民らの心や体を温めてきた。
昨年、NHKのドキュメンタリー番組で取り上げられたのを機に、遠方から訪れる人も増えたが、今年3月末、店主が高齢化を理由に閉店することになり、自販機も営業をいったん終了した。
しかし、惜しむ声が多数寄せられたことから、近くにある道の駅「あきた港」が譲り受け、半月かけて修理して4月末に再稼働、「第二の人生」をスタートさせた。今も週末には長い行列ができ、200杯以上が出る日もある人気ぶりだ。
ところが、自販機の老朽化は著しく、故障した場合、メーカーに部品の在庫がないため鉄工所に特注しなければならず、その費用は1万円以上かかるという。うどん粉やそば粉などの原料費の高騰も値上げの理由の一つだ。
元店主で、今も自販機を管理する佐原澄夫さん(65)は「お客さんから『200円では安すぎる』という言葉もいただいている。地元の活性化のためにも、この自販機にはもうひと頑張りしてほしい」と話している。
テレビ番組で自販機の存在を知り、東京都国分寺市から家族と訪れた福祉施設職員、佐川靖子さん(55)は「一度でいいから食べてみたかった。ダシが薄くて安心する、優しい味」と満足げに話し、「値上げしても、250円ならお手ごろな値段」と温かく受け入れていた。
現在の営業は毎日午前10時〜午後5時。