2017年2月に閉店したさくら野百貨店仙台店(仙台市青葉区)跡地のビルと土地の一部が既に売買されていたことが28日、分かった。買い取ったのは、かつて仙台店の運営会社エマルシェ(同)の経営権を握っていた投資ファンド、東北リテールマネジメント(東京)。建物の解体と一体的な再開発が目的とみられる。
仙台店は八つのビルで構成され、6オーナーが所有する。匿名組合が出資する最大のオーナー、さくら野DEPT仙台合同会社(東京)のビルと土地は全体の約8割を占める一方、中央部の土地は別のオーナーが所有していたため、東西に分断された状態だった。
関係者によると、仙台店跡地の売買は18年11月下旬に行われた。東北リテールが取得したビルと土地は中央部にあり、さくら野DEPTの所有地を分断していた。
東北リテールに売却したオーナーは登記簿上、1940年代から中央部のビルと土地を所有していた。取引額は非公表だが、地元不動産関係者によると、土地評価額で数億円に上るという。
別の経済関係者は「今回の取引で東西の土地がつながった。東北リテールとさくら野DEPTは事実上、一体化した関係にある」と指摘する。
さくら野DEPTは15年3月、エマルシェに未払い賃料など計約10億円の支払いと建物明け渡しを求め提訴したが、16年3月に急きょ和解した。さくら野DEPTが示した和解条件は、東北リテールがエマルシェの経営権を握ることだったとされる。
東北リテールは16年2月に設立され、エマルシェの全株式の8割を取得。同年4月、東北リテール関係者の男性がエマルシェ社長に就任した。男性は半年後の同年10月に退任したが、東北リテールがエマルシェの経営権を握った状態が続いたままで仙台店は閉鎖した。
地元の不動産関係者は「さくら野DEPTにとっても、今回の不動産取得のメリットは大きい。東西分割状態で再開発しても土地の価値は半減する。東西がつながることで、再開発を希望するデベロッパーとの交渉で強気に出られるのではないか」と分析する。