「めっちゃかわいい」「癒やされる」と周囲の愛情を一身に集める一方で、「うるさい」「汚い」と邪険に扱われる。かと思えば、地域おこしのシンボルにと期待を寄せられる不思議な小動物、猫。百万都市仙台に暮らす猫たちの今を拾い集めた。(夕刊編集部・三浦康伸)
◎百万都市に暮らす命(1)ボランティア
<速やかに手術>
仙台市泉区の住宅街。朝の冷気が残る民家の軒下で、かすかな物音がした。
「かかってますね」。猫ボランティアの近藤ひろみさん(41)=仙台市泉区=が言う。偽装用の毛布をめくると、捕獲器の中で身構える灰色の猫が見えた。
1~2歳の雄。捕獲器ごと車に収容し近くの動物病院へ向かう。人慣れしていない野良猫は激しく暴れるため、捕獲後速やかに手術を受けさせる必要がある。
近藤さんは、「野良猫の捕獲」「不妊手術の実施」「現地へ返還」を一括して行う「TNR活動」を続けている。
この地域で活動を始めたのは今年7月。これまでに16匹を保護、4匹を現場に戻し9匹は里親へ。残る3匹の保護を自宅で続ける。
「未捕獲の猫が残っている」と近藤さん。現場通いはしばらく続きそうだ。
<全国から寄付>
組織に属さず、行政や住民の依頼を受けて現場へ向かう猫ボランティア。現在、市内では数人が継続的に活動する。
注がれる無数の視線に一瞬気おされる。一室に約30匹。「よそ者」を確認すると瞬時に物陰へ隠れた。佐藤美紀さん(53)=太白区=が市内で捕獲、自宅で保護する猫たちだ。
TNR活動を続けて9年目のベテラン。活動の源泉は、「あなたのおかげで地域が変わった」という住民からの感謝の声だ。
岩渕涼さん(59)=青葉区=は同区作並で「猫シェルター」を運営。各地で保護した約90匹を収容する。要請次第で市外にも出掛ける。「『来ないなら保健所へ連れて行く』と言われたら、放っておけない」と岩渕さん。
猫ボランティアは全国からの寄付に加え、餌代や医療費など毎月、万単位の身銭を切って活動費を賄う。祝福もなく産み落とされた小さな命を、猫ボラたちが支えている。
<TNR活動>野良猫を捕獲(Trap)し、避妊・去勢手術(Neuter)を施した上で、元のすみかに返す(Return)活動で米国が発祥。仙台市獣医師会は避妊・去勢手術を行う猫1匹当たり最大6000円を助成する。環境省は、住民と野良猫の共生策として「地域猫活動」を推奨。その一環でTNRが必要だとしている。