<どうなる和牛市場>小売り縮小招く恐れも

仙台市内で「仙台牛」をはじめ県産牛肉を売りにする精肉店主の表情はさえない。「牛肉の仕入れ値は昨年から高止まりの状態。お客さんの購買状況を考えると値上げはできない」とため息をつく。

◎高騰続く子牛相場(5完)高止まる枝肉価格

荷受け会社の仙台中央食肉卸売市場(仙台市)によると、市中央卸売市場食肉市場で競られた牛肉のうち仙台牛に格付けされる最高等級のA5(去勢)の枝肉は2010年、1キロ当たり約2200円だった。それが今年は、2900円前後に上がった。
農協や流通業などの関係者の話では、全国で高齢化や子牛相場の高騰などで肥育農家が廃業し、牛肉供給量が減った。一方で「肉フェス」が人気を呼ぶなど肉ブームもあり、肉問屋は欠品を避けるため高値でも買い付けているという。
比較的安価だったA3、A2の値上がりも著しい。
飲食業界では、ハンバーグや焼き肉にはホルスタインの雄や、和牛とホルスタインの交雑種(F1)が使われてきた。
だが、ホルスタイン繁殖に雌が生まれる割合が9割の性判別精液が普及し、雄が激減。受精卵移植の技術向上でF1よりも和牛が生産されるようになった。
代替としてA3、A2の需要が伸びた。A5とA3で1キロ当たり800円ほどあった価格差は数百円差に切迫。牛肉相場全体を押し上げている。
枝肉買い付け業者らでつくる仙台食肉買参(ばいさん)事業組合(48社)の公平(こうだいら)弘理事長(61)は「小売店も厳しいが、われわれも心底参っている」と打ち明ける。量販店に見積もりを出してから仕入れたら、相場が上がっていて利益が出ないときが多いという。
「牛肉需要は例年、年末がピーク。以降は商売にならないから、牛肉の販売スペースを大幅に縮小する量販店が相次ぐ」と予想する買い付け業者もいる。
公平理事長は「そうなると需給バランスが崩れて牛肉相場が下がる。高い子牛を買った肥育農家は行き詰まり、繁殖農家も経営が危うくなる。われわれも買い付ける肉がなくなってしまう」と危惧する。
関係者が期待を寄せるのは宮城で初めて来年9月開催される「全国和牛能力共進会(全共)」だ。牛の肉質を競う5年に1度の「和牛五輪」で県産牛が金メダルを取れば、松阪牛や米沢牛に知名度で劣る仙台牛のブランド力がアップし、東京などへの売り込みを加速することができる。
閉塞(へいそく)感漂う和牛業界に希望の光は差すのか。全共県実行委員会の担当者は「仙台牛の肉質には絶対の自信がある。全共をステップアップの機会にしたい」と意気込む。
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和牛子牛(生後300日前後)の取引価格が高騰を続け、関係者を悩ませている。高齢化と東日本大震災の影響で廃業する繁殖農家が相次ぎ、子牛の供給頭数が減ったからだ。子牛を成体に育てる肥育農家からは「高すぎる」と悲鳴が上がる。宮城では来年9月「全国和牛能力共進会(全共)」が初めて開催される。宮城は肉用牛の飼養戸数が全国4位、頭数は7位の畜産県だけに、生産現場や食肉市場に不安が広がる。(若柳支局・横山寛)

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