夜行列車「はまなす」(青森−札幌)が鉄道ファンの人気を集めている。座席だけの客車を主体に寝台車も連結し「ブルートレイン」の雰囲気を味わえ る最後の定期列車で、JR全社で唯一残る定期運行の急行でもある。来春の北海道新幹線開業に伴う廃止も取りざたされ、夏休み中は土日を中心に寝台券の完売 が相次いでいる。

はまなすは青函トンネルが開業した1988年3月、22日札幌発を最後に臨時運行も終えるブルートレイン「北斗星」(上 野−札幌)とともにデビューした。その後、寝台車、個別に横になれるカーペットを敷いた車両を連結する独特の編成となり、旅行者やビジネス客に愛用されて きた。

現在は通常7両編成のうち寝台車2両、カーペット車両1両。JR北海道によると、寝台車は旧国鉄時代に本州のブルートレインで活躍していたもので人気が高い。今年4月にはヘッドマークが盗まれる事件もあった。

また、料金が高くてもスピードやサービスを求める時代の流れで急行が特急に取って代わられる中、はまなすはフェリーなどとの価格競争があるため急行の看板を下ろさず、2012年以降はJR唯一の急行となった。

しかし、16年春に北海道新幹線(新青森−新函館北斗)が開業すると、青函トンネルは新幹線と在来線の共用とされ架線の電圧が新幹線と同じ高さに上がり、 はまなすの客車をけん引する今の機関車が使えなくなる。経営が厳しいJR北海道に新型機関車を導入する余力はない。JR貨物から借りる方法も考えられるが 乗務員の訓練が必要な上、JR貨物は「機関車の転用計画はない」と否定的だ。

13〜14日に青森から札幌まで、はまなすの旅を楽しんだ北 海道江別市、団体職員、角田広佑(かくた・ひろすけ)さん(36)は「札幌に早朝着く利便性や、乗客同士が仲良くなれる空間が好きで、これまで何度も利用 した。廃止になったら寂しいが、北海道新幹線を待望する道民の気持ちを考えるとやむを得ない」と話した。

今年は、はまなすにとって最後の夏となってしまうのだろうか。【本多健、山下智恵】