<アカデミー賞>ドキュメンタリー部門候補「津波そして桜」

 【ロサンゼルス堀山明子】24日に発表された第84回アカデミー賞ノミネート作品の短編ドキュメンタリー賞部門で、東日本大震災直後の被災者の姿を追った映画「津波そして桜」が5候補の中に食い込んだ。撮影したイギリス人映画監督、ルーシー・ウォーカーさん=ロサンゼルス在住=は朗報に「世界の人たちが復興に挑む日本に思いを寄せ、それが被災者への励ましにつながれば、うれしい」と語った。
 震災前から桜をモチーフに日本人の心を描く、俳句の世界のようなドキュメンタリーを計画していた。しかし訪日直前に震災が発生。一度は撮影を断念したが「今こそ日本とつながらなければ」と映画内容を被災地記録に変更した。被災者が心を開いてくれるか確信がないまま昨年3月末、飛行機に乗った。
 津波被害を受けた宮城県南三陸町や気仙沼市の避難所でカメラを向けると、被災者は泣きながら惨状を訴えた。「物静かな日本人がストレートに感情表現をしてくれて驚いた」という。それだけ傷が深いことも知った。
 ちょうど桜開花のシーズン。約3週間に及ぶ取材を重ねる中で、津波被害後も根を張り花を咲かせた桜を見て、被災者が自然に復興への決意を語り始めた。「思いがけず、桜をよりどころにする日本人の心模様が撮れた」
 社会派ドキュメンタリーの上映運動を続ける非営利組織と連携し、高校やワシントンの桜祭りに合わせた上映会も企画中だ。「3月11日には多くの上映会をやりたい」。視線はアカデミー賞発表の2月26日より先、被災から1年に向いている。

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