<イチョウ>ギンナンにおい、困った…自治体、拾って配布も

 秋の風物詩か通行の迷惑か--。街路樹のイチョウを巡り、自治体が対応を迫られている。黄色く色づいた葉が人々の目を楽しませる一方で、路上に落ちたギンナンのにおいに苦情が相次いでいるからだ。職員が拾って市民に配布する「地域還元」で理解を求める自治体も現れた。
【全国に一番多い街路樹】イチョウは何位?
 イチョウは景観向上、日陰形成、ガードレール効果などの観点から、全国で約57万本が植栽されていると言われる。実をつけるのは雌株で、雄株だけを選んで植栽する場合もあるが、苗木の時点では見分けがつきにくい。
 全国有数のイチョウ並木の名所、大阪・御堂筋。「この季節は最も気を使うんですわ」。約1000本を管理する大阪市北部方面公園事務所の担当者は言う。250本は雌株で、実がなる毎年10月上旬、「ギンナン落とし」を行う。午後10時から朝まで木を揺すって落としたギンナンを市民に配っている。
 それでも苦情は減らない。御堂筋では大阪マラソンなどの大型イベントが開かれる上、高級ブティック店が軒を連ね、ぎんなんがつぶされるのは避けられない。担当者は「昔は秋の風物詩として楽しんでもらえたのに……」とため息をつく。
 川崎市も今年初めて、市役所前の大通り沿いで職員が拾ったギンナンをイベントで無料配布した。昨年度から74本あるイチョウ並木の自転車道が整備されて通行量が増え、ギンナン対策を求める陳情が市民から出ていた。
 一方、イチョウ並木で有名な明治神宮外苑。都道部分を管理する東京都第一建設事務所によると「苦情はなくイチョウを楽しんでいる人がほとんど」という。ギンナンの生産量日本一の愛知県稲沢市はさらに達観。産地の旧祖父江町地区は、地域全体が黄金色になるほどイチョウが多く独特のにおいが漂うが、県尾張農林水産事務所は「仕方ないという感じでずっと受け入れている」と寛容だ。
 長田敏行・法政大教授(植物分子生物・生理学)は「イチョウは自治体のシンボルや校章のモチーフになっており、ギンナンは日本の食文化の一部。においを敬遠せず、黄葉を楽しんでほしい」と話している。【飯田憲、高木香奈】

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