コンビニエンスストアが設置するマルチコピー機の利用が年々伸びている。従来のコピー機能に加えて、インターネットを通じて出先で必要な資料を印刷したり、撮影した写真を高画質でプリントしたりできるようになるなど、使途が拡大しているためだ。住民票の写しの発行など行政文書も取得できるようになり、コンビニ間でコピー機のサービス競争が広がっている。【安藤大介】
大手コンビニのうち、セブン-イレブン・ジャパンは富士ゼロックス製、ファミリーマートとローソンはシャープ製、ミニストップはリコー製を導入して、提供コンテンツの充実を競っている。
セブンは8月末から、日本郵便と連携してオリジナルデザインの手作り封筒やプレゼント用包装紙などをマルチコピー機で印刷できるサービス「ラッピングデザインキット」を始めた。誕生日用やクリスマス用など登録されたデザインをもとに、スマートフォンで撮影した写真も取り込みながら、作品を手軽に作ることができる。インターネットを経由して、営業マンが出先で資料などを印刷できる「ネットプリント」の機能を活用した。
セブンのコピー機ははがき専用のトレーを備え、はがきに高画質の写真を印刷できるのも特徴だ。コピー機の機能拡大により、セブンのコピー機の利用枚数は過去5年で2倍以上に伸びたという。
ファミリーマートとローソンは、アニメや映画のキャラクターのブロマイドのプリントサービスに力を入れる。両社が採用するシャープ製コピー機は、通常のL判より一回り大きい2L判(縦12.7センチ、横17.8センチ)をプリントできる機能を、業界に先駆けて2012年に導入した。ファミマは提携する吉本興業の芸人のブロマイドのプリントサービスが女性に人気があり、ローソンは最新映画のブロマイドの品ぞろえが豊富なのが特徴だ。
ミニストップはコピー料金の安さが売りだ。A4、B4、B5サイズの白黒コピーの料金を12年12月以降、1枚10円から5円に値下げして、枚数の多い資料を印刷する学生らの人気を集めている。高機能コピー機の導入ではライバルに後れをとったが、昨年11月から大型タッチパネルを備えた最新機種を配備し、巻き返しを図る。
一方、大手コンビニは行政文書を取得できるサービスを、全国自治体の2割以上に当たる約430市区町村と連携して実施している。マイナンバーカードを使い、登録の暗証番号などを入力することで、住民票の写しや納税証明書などを取得できる。夜間や土日でも利用できるため、「利便性の高さからコピー機利用を下支えしている」(大手コンビニ)という。
【キーワード】マルチコピー機
コンビニエンスストアに置かれ、コピー以外の機能が充実した複合機。インターネットに接続したことで、進化が加速した。2000年代前半に地図のプリントやファクス送信サービスが広まり、高画質の写真プリントなどもできるようになった。入手可能な情報は、楽譜やブロマイド、小学生向けの学習ドリルやパズル、世界の名画、過去の新聞など多様化している。印鑑登録証明書など行政文書の入手や、各種チケットの発券もできるようになった。支払いに電子マネーが使えたり、無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」を経由して、スマートフォンに保存されている写真や文書をプリントできるようにもなったりしている。