大手コンビニエンスストア10社の店舗数は5月末現在、5万480店。前年同月に比べ5.3%増えた。年間売上高は約9兆4000億円に上り、百貨店を約3兆円上回る。国内5万店は「飽和水準」ともいわれるが、セブン-イレブンやファミリーマートの今年度の出店計画は、いずれも過去最高の1600店。高齢化に対応した宅配サービスなど時代のニーズを取り込みながら、新たな出店余地を開拓し続けている。
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米国生まれのコンビニだが、米国内では伝統的にガソリンスタンド内の小型店舗が強く、日本型コンビニは少数派。市街地に複数店舗が密集するようなケースは海外ではほとんど見られず、日本は世界に例のないコンビニ大国となった。
都道府県別でみると、店舗が最も多いのは東京都。大手5社で6519店が出店。人口10万人あたりに49店がある計算で、コンビニの密集度合いでも日本一だ。密集度の2番手は宮城県で、10万人あたりに45店。次いで愛知県の44店と続く。逆に最も店舗が少ないのは高知県の172店。10万人あたりに22店で、密集度は東京都の半分以下だ。
国内でコンビニの本格展開が始まったのは40年前。大手スーパーのイトーヨーカ堂が米国のセブンの運営会社とライセンス契約を結び、1974年5月、東京都江東区豊洲にセブン1号店を出店した。翌年にはダイエーがローソンを設立し、81年には西友ストアー(現西友)のコンビニ事業を引き継いでファミマが発足。大競争時代が始まった。
飛躍のきっかけになったのが、おにぎりの商品開発だ。家で作るのが一般的だった時代、セブンは原材料やごはんの炊き方を研究。パリッとしたのりの食感を楽しめる包装フィルムを開発し、78年に発売して大ヒット。他社も追随し、コンビニの主力商品となった。
80年代以降、個々の商品がいつ、どの程度売れたのかを瞬時に把握するPOS(販売時点情報管理)システムの導入が進んだ。売れ筋商品の仕入れを増やし、売れない商品を売り場から外すなど、頻繁に商品を入れ替え、コンビニは収益力を高めていった。
◇宅配サービスや共同出店を加速
80年代後半になると、コンビニはさらなる進化をとげる。単身世帯や働く女性が増える中、「24時間営業」の利点を生かし、電気、ガス料金の収納業務や、ATM(現金自動受払機)設置、住民票の発行などのサービスを次々と導入。単なる小売店ではなく、社会インフラとしての役割も増していった。2011年の東日本大震災では、大手3社の東北地方の店の8割が約2週間で復旧。被災地への食品の供給を段階的に再開し、ライフラインとしての役割も注目された。
積極出店を受け、都市部や地方の幹線道路沿いなど従来型の「一等地」は減っている。各社ともJRや私鉄の駅構内のいわゆる「エキナカ」や病院内など、従来になかった場所への出店を強化。カラオケ店や薬局などとの共同出店も目立つようになった。高齢者の増加に対応し、宅配サービスも充実させている。電話やインターネットで注文をすると弁当を届けたり、一部店舗では食品以外の商品も宅配したりするなど現代の「御用聞き」の役割も担い、新たな顧客層を開拓している。
◇日本モデルでの海外展開困難も
海外展開も欠かせない戦略だ。セブンは現在、海外15カ国に3万6000超の店舗がある。05年には本家、米国のセブン-イレブンを子会社化し、日本型の運営手法を注入。業績を向上させた。他社もアジアを中心に日本モデルのコンビニ輸出を進めている。
ただ海外展開にはリスクもつきまとう。ファミマは今年5月、約8000店舗を展開していた韓国市場から撤退。独立志向が強い合弁相手との戦略の違いが出たのが原因とみられる。ミニストップもカザフスタンからの撤退を決めた。国内外での拡大路線は、一筋縄ではいかない時代に入っている。【神崎修一】