<サイバーストーカー対策>SNSも規制 18府県が条例で

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での他人への嫌がらせを、全国18府県が迷惑防止条例で禁止していることが毎日新聞の調査で分かった。 無料通信アプリ「LINE(ライン)」などによるつきまといの被害が深刻化しているが、現行法では規制の対象外。SNSを悪用した「サイバーストーカー」 を自治体が独自に規制する動きが広がっている。

2000年施行のストーカー規制法は実際の尾行や待ち伏せのほか、電話やファクスによるつきまといも禁止。13年の改正で電子メールも対象に加えたが、 SNSはまだ含まれていない。ラインなどで相手が嫌がるメッセージを送っても、脅迫などの言葉がなければ立件は難しいのが現状だ。

東京都小金井市で先月、芸能活動をしていた女子大生が刺された事件では、容疑者の男が逮捕前、ツイッターで「死にたい」などのメッセージを数百回にわたって送っていたとみられている。

ネットを使った嫌がらせに対応するため、兵庫県は7月1日に改正条例を施行する。拒絶する相手に対し、正当な理由がないのに「電子メールその他の電気通 信」で繰り返しメッセージを送ることを禁止。ラインやツイッター、フェイスブックなど、全てのSNSが対象になるという。

ストーカー規制法が要件とする恋愛感情などの立証も不要で、警察は警告なしに逮捕できる。違反者には6カ月以下の懲役(常習は1年以下)か50万円以下 (同100万円以下)の罰金が科される。同性間の行為も対象で、近隣トラブルや悪質な借金の取り立ても想定しているという。

毎日新聞が全都道府県の条例を調査したところ、同様の規定を設けているのは青森、岩手、宮城、福島、群馬、千葉、神奈川、石川、岐阜、静岡、三重、京 都、奈良、岡山、広島、愛媛、福岡、熊本--の18府県。13年ごろから各地で条例改正が進む一方、東京都や大阪府の条例は電話やファクスは対象にしてい るがSNSは含んでいない。

兵庫県警は「重大犯罪が起きる前に取り締まることが可能で、抑止効果も期待できる。運用は厳格に行う」としている。【五十嵐朋子】

◇弁護士会、メッセージの内容や回数に「明確な基準を」

条例によるSNSの規制はストーカーなどの抑止効果が期待される一方、対象となるメッセージの内容や回数には明確な基準がない上、アカウントの乗っ取りやなりすましで、別人が疑われる懸念もある。

昨年3月に実際の待ち伏せやSNSでの嫌がらせを規制対象に加えた宮城県では、仙台弁護士会が「言論の自由を制約する恐れがある」として、基準を明確化するよう求める声明を出した。

諸沢英道・元常磐大学長(被害者学)は「国の法整備が技術の進歩に追いつかず、自治体が率先して対応する動きは評価できる。ただ安易な適用は許されず、警察がメッセージの送信者に警告するなど慎重な運用が必要だ」と指摘している。【五十嵐朋子】

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