ササニシキの父で、宮城県の産地品種銘柄に再認定されたササシグレを使ったすし店が4月、東京・渋谷の表参道ヒルズにオープンした。扱うのは宮城県加美町産。「幻のコメ」の東京進出に、地元の栽培農家は「大変光栄なこと」と励みにしている。
すし店は、首都圏を中心に29店を展開する「築地玉寿司」(東京)の新店舗「ささしぐれ 築地玉寿司 表参道ヒルズ店」。シャリは全てササシグレを使う。年間取引量は現在3トンで、6トンまで増やす予定。
ヒルズ店にササシグレを提供する加美町の農家長沼太一さん(68)は、「奇跡のリンゴ」で知られる弘前市のリンゴ農家木村秋則さん(66)に共鳴し、無農薬、無肥料で育てている。
ササシグレは1955年ごろ、宮城県内の水田作付面積の65%を占める代表品種だった。倒伏やイモチ病に弱く、主流はササニシキ、ひとめぼれに移り、品種銘柄も廃止された。
長沼さんらは食の安全、安心の観点からササシグレの復活に取り組み、県古川農業試験場(大崎市)の協力を得て、2014年春に銘柄に再認定された。
販路を開拓しようと、長沼さんと木村さんは築地玉寿司を訪れ、ササシグレを売り込んだ。同社は「安全、安心で低糖質。何よりも酢飯によく合う」と高評価。独自に研究と試食を重ね、七分づきでササシグレを提供している。
長沼さんは「ササシグレのうまさを全国に広め、ブランド化を目指したい」と意気込む。