東京電力は、福島第1原発事故の対策拠点として使用しているJヴィレッジ(福島県楢葉町)から撤退し、2018年ごろにサッカー施設として使用を再開させる方向で検討に入った。Jヴィレッジ以外の場所に対策拠点を設ける準備を進め、日本サッカー協会(JFA)などとともに20年の東京五輪の練習拠点として利用することを目指す。Jヴィレッジ再開など東電としての復興支援を、年内に見直す総合特別事業計画(再建計画)に盛り込む。【浜中慎哉】
【グラウンドは資材置き場 芝も荒れ】Jヴィレッジ復興へ プロジェクト始動
Jヴィレッジは、JFAなどが運営する日本初のサッカーのナショナルトレーニング施設。日本代表の合宿に使われていたほか、02年の日韓ワールドカップの際はアルゼンチン代表がキャンプ地として使用した。だが、11年の福島第1原発事故以降、東電社員らの作業拠点になったことで、サッカー施設として利用できなくなっている。
JFAなどは東京五輪で、宮城県をサッカー競技会場の一つとし、Jヴィレッジを出場チームの練習拠点とする案を検討している。
これを受け東電は作業拠点を順次Jヴィレッジから移すほか、施設内の除染や荒れ放題の天然芝のピッチなどの整備を行うことで、サッカー施設として使えるようにする。
東電のある幹部は「五輪までに廃炉、除染作業にめどをつける決意表明の意味もある」と説明。JFAの田嶋幸三副会長は除染をどうするかなど具体的な話は聞いていないとした上で「20年の東京五輪も決まり、復興の意味も込めてJヴィレッジをキャンプ地に利用したいというのはサッカー界の総意。一年でも早く使用できるようにしたい」と話した。五輪招致レースの最終盤では、海外から汚染水問題への不安の声が強まった。東電は、Jヴィレッジを再開できる環境を整えることで、こうした懸念を和らげたり、復興を後押ししたりする狙いもあると見られる。
【ことば】Jヴィレッジ
サッカー日本代表強化やワールドカップ招致の呼び水とすることを目的に、日本サッカー協会や東京電力などが出資して1997年に設立されたトレーニング施設。94年に東電が原発増設に理解を得るため、福島県に地域振興策として提示したのがきっかけだった。約50ヘクタールの敷地内に12面のグラウンドや260人収容の宿泊施設を備え、かつては日本代表の合宿などに使用されたが、2011年の福島第1原発事故以降、作業員らの除染や宿泊の拠点となっているほか、東電の福島復興本社が置かれている。