◇化粧品会社が計画 米団体支部に寄付も
化粧品や入浴剤などを販売するラッシュジャパン(本社・神奈川県愛川町)が30日に始める予定の「残酷なフカヒレ漁反対キャンペーン」に、サメ水揚げ日本一の宮城県気仙沼市の水産関係者が「サメ漁に対する根拠のないマイナスイメージが広がる」と反発している。東日本大震災の津波で漁業・水産加工施設が大きな被害を受けた同市は、特産のサメ製品を復興の起爆剤の一つに位置づけており、経済的な打撃を懸念している。【井田純】
キャンペーンは来月8日まで全国で展開。期間中、サメの背びれをモチーフにしたチャリティーせっけんを販売するほか、一部店舗では「残酷なフカヒレ漁を象徴する」パフォーマンスを行う計画だ。同社はキャンペーンの狙いを「生きたままヒレだけを切り取り魚体を海に捨てるフィニングという漁の残酷さを指摘するため」と説明する。
しかし、気仙沼遠洋漁協の斎藤徹夫組合長は「気仙沼のサメは肉もはんぺんなどに加工され、フィニングなどない」と反論。皮は財布などに、骨もサプリメントの原料になり、「余すところなく利用されている」と言う。同漁協と水産加工業者らは、環境に配慮した持続的漁業を目指し「海のエコラベル」といわれる国際認証取得の準備を進めている。
同社は「気仙沼のサメ漁に反対する意図はない」とするが、チャリティーせっけんの売り上げは「あらゆるサメ漁への反対」を掲げる団体「パンジアシード」(本部・米ハワイ)の日本支部などに寄付される。同団体は、強硬な反捕鯨団体シー・シェパードの「サメ版」とも言われ、創設者のトレ・パッカード代表は、毎日新聞の取材に「気仙沼のサメ漁は海洋環境全般に大きなダメージを与えており、フィニングの有無にかかわらず認められない」と回答した。
サメ肉の利用拡大を図る「サメの街気仙沼構想推進協議会」は「気仙沼のサメ漁が誤解を受けないよう配慮してほしい」と、ラッシュジャパンに申し入れたが物別れに終わった。同協議会の高橋滉さんは「フィニングへの反対は我々も同じ。接点を探ろうとしたが、これまでの取り組みやサメを食べる文化そのものを否定されたように感じた」と憤る。
同社は1994年に英国で創業。日本には99年に第1号店を出し、現在156店舗を展開する。これまで海外で反サメ漁キャンペーンを実施してきた。