<ステマ>ネット上の「サクラ」は規制できるの?

 「ステマ」なる言葉がある。「ステルスマーケティング」の略称で、インターネット上の口コミサイトやブログ、ツイッターでの一般の書き込みを装った宣伝などを主に指す。ネット利用者をこっそり誘導しようとする「現代版サクラ」の実情は?【中澤雄大】
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 ◇中傷であれば違法だが…
 ステルスとは「内密の行為」の意味。最近「ステマ」が注目されるようになったきっかけは、口コミを元に飲食店をランク付けする人気グルメサイト「食べログ」での不正行為の発覚だ。飲食店から謝礼を取って、「おいしい」「また行きたい」といった好意的な感想(レビュー)を投稿してランクを上げる「不正業者」が39社あると、食べログの運営会社・カカクコムが発表した。同社は、サイトの信頼性が損なわれるとして、法的措置も検討している。
 いわゆるサクラを使った“販売促進活動”は以前から広くあるが、ネットでは影響力が大きいのが特徴。食べログに掲載されている東京都新宿区四谷3にある居酒屋は「客の大半はネット評価を信頼して訪れるので、正直ランキングは気になる」と話す。
 その後も、ネット大手のヤフーが運営する質問掲示板「ヤフー知恵袋」で、「空港でおすすめのお店は?」との質問に対する不正な投稿が明らかになった。一方、レビュー・口コミの総数が計約7740万件(23日現在)にも上るショッピングサイト「楽天市場」、旅行情報の「楽天トラベル」では、「『食べログ』のように誰もが投稿できるのではなく、不正業者が入りにくい仕組みにしている。書き込みの監視も常時しており、不正情報は把握していない」(広報担当者)と説明する。
 消費者庁は昨年10月、景品表示法(景表法)に基づく業者対象のガイドラインを作成し、好意的な書き込みばかりが目立つ不審な口コミサイトについても不当表示に該当する可能性に言及した。
 「ステマ」問題の調査に乗り出した同庁表示対策課の片桐一幸課長は「著しく消費者を誘導・誤認させた事実が判明すれば、厳正に対処する」と話す。ただ、「飲食店が依頼して書かせたのか、金銭の授受があったのかなどを証明する必要がある。『お得だ』『きれい』などの言い方は一般的で、表現の自由もあり、取り締まるべきものかどうかの線引きは難しい」とも。
 ネット上の人権侵害などを担当する総務省は「店の誹謗(ひぼう)・中傷であれば、プロバイダー責任制限法が適用されるが、ステマ問題は今のところ、違法とは言えない」(消費者行政課)との姿勢だ。
 ◇日本人気質を悪用
 著書「IT社会の護身術」などでネット空間の闇を指摘する佐藤佳弘・武蔵野大教授(社会情報学)は「ステマは、他人の感想・評価を重視する日本人の消費気質につけ込むもので、ネット社会が生んだ病理。口コミ代行・投稿請負業者は個人になりすまして書き込むため、防ぎようがないのが実情です。悪意のクレームを書き込み、削除するために金銭を要求する“逆サクラ”もいる。ネット情報は玉石混交。他人が発信した情報には常に一歩退いた心構えが必要」と言う。
 ネット上にはステマへの不信感を示す書き込みも見られ、「ステマにだまされない『食べログ』の使い方」などのサイトも出現。有用な口コミ情報も少なくないだけに、当面利用者が注意を払うしか手だてはなさそうだ。

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