<タキタロウ>今度こそ 伝説の巨大魚、大鳥池で30年ぶり調査

 朝日連峰の大鳥池で6~8日、伝説の巨大魚「タキタロウ」の生息調査が30年ぶりに行われる。調査は「大鳥地域づくり協議会」(工藤悦夫会長)が実施し、タキタロウを通した地域の人々の新たなつながりも模索する。調査を率いるのは、国の地域おこし協力隊として鶴岡市大鳥に移住した田口比呂貴さん(27)=大阪府豊中市出身。「ロマンは追い掛けるもの」を合言葉に、地元住民を中心に県内外のタキタロウファン計15人の調査団と準備に追われている。【長南里香】
 「体長は2メートルにも及び、下あごが突き出たどう猛な顔。ウサギのように口が裂けている」「水深30メートル、水温5度の淡水湖で生息。ヌメヌメしたナマズのような粘膜に覆われる」
 地域おこし協力隊として昨年5月に同市大鳥に派遣された田口さんは、さまざまな証言を住民から聞いた。特に、大鳥池の山小屋を管理する同市大鳥の旧朝日村長、佐藤征勝さん(71)の話には心が躍った。佐藤さんが1983年、旧朝日村主催の「大鳥池調査団」に加わった際、捕獲はできなかったが、体長2メートルもの魚群約100匹を目撃した話だ。
 田口さんは「淡白ながら濃厚な味だったと、捕獲して食べたりした人の話も語り継がれている」と話し、幻や伝説というよりも現実味があることに興味を募らせる。その一方で、地域は高齢化と少子化が進み、登山客が減っているという声を受け、考えた。子どもから年配者までの心をつないでいるタキタロウに再び光を当てることで、地域を活性化できないかと。
 田口さんは佐藤さんが事務局を務める大鳥地域づくり協議会を主体に、地域住民と調査の実施に向けて話し合いを重ねた。手こぎゴムボートに水深計測器や魚群探知機を搭載し、ビデオやカメラなどで記録すると決めた。
 地域の話題を発信するインターネットサイトを通じて参加者を募ると、県内外から予想以上の反響が寄せられ、魚群探知機を持参して参加するという人もいた。
 田口さんは「タキタロウに夢を抱いている人がいまも全国にいる」と驚く。調査結果は機器類の解析後、報告する予定という。
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 ■ことば
 ◇タキタロウ
 かつての庄内藩鶴岡出身の博物学者、松森胤保(1825~1892)が「両羽博物図譜」で紹介。昭和40年代には漫画家の矢口高雄さんが「釣りキチ三平」で取り上げた。1983年の調査に同行したテレビ局が放送したことで注目は全国に広がった。それを機に旧朝日村はタキタロウをシンボルに村おこしを推進してきた。

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