<ツタヤ図書館>来館者増も各地で波紋

◎知の拠点 多賀城に来春開館(中)新機軸

<新機軸コーヒー片手に>
天井まで届きそうな書架が広がる。館内には、書籍などを販売する書店と、コーヒーチェーン店も。音楽が流れ、来館者はコーヒーを片手に、読書や勉強など思い思いに楽しんでいる。従来の図書館のイメージとは大きく異なる。
10月1日、大手レンタルチェーンTSUTAYA(ツタヤ)を展開する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」が指定管理者となる全国2例目の 神奈川県海老名市立中央図書館がオープンした。CCCによると「平日の来館者数は平均約3000人で週末は約5000人。改装前の約3倍になった」。
CCCによる公立図書館の指定管理者第1号として、2013年4月に開館した佐賀県武雄市図書館は、市の人口5万に対し、初年度は92万人、14年度は 80万人を呼び寄せたという。市が9月に行った利用者アンケートでは、回答者の85%が「大いに満足」または「満足」と答えている。

<独自分類に批判>
CCCによる運営は順調な滑り出しに見えたが、さまざまな騒動が噴出する。海老名で、CCCと指定管理の共同事業体を組んだ図書館流通センター(TRC)は、運営方針の違いから「今後は新たにCCCとは組まない」と表明した。
TRCは国内の図書館が採用する十進分類法ではなく、CCC独自の分類法を問題視した。例えば、ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」が「旅行」 の棚にあり、分かりにくいと指摘する。CCCは「ロシアを旅したくなったら、読んでほしい本として並べた」と説明する。
公立図書館の運営では新 参組のCCCが打ち出す新機軸は、ほかにも波紋を呼ぶ。武雄市では「建物の主要部分が書店で図書館は奥にやられた」「郷土資料が廃棄された」と市民に批判 された。CCCの購入資料が不適切との訴えも。CCCの指定管理を視野に入れた愛知県小牧市では住民投票に発展し、反対多数で市は計画見直しを迫られた。

<集客へ運営尊重>
多賀城市立図書館(宮城県多賀城市)はCCCが運営する3例目。市は集客力を重視し、CCC独自の運営を尊重する方針だ。市は「開館後、運営上の指摘があ るかもしれないが、責任は設置者の市にある。日が浅いCCCには公務員に代わって仕事をする意識をきちんと持ってもらう」とくぎを刺す。
東北学 院大文学部の佐藤義則教授(図書館情報学)は「図書館に指定管理制度が導入され、民間企業が参入したが、多くは直営時代と大きな違いがなく、行政も適正な 事業評価をしてきたとはいえない」と指摘。CCCの図書館は、過去に例がないほど公立図書館が注目を集める契機になったとし「リスクを承知の上で、行政に は新しい取り組みを総合的に評価する仕組みが必要だ」と話している。

[図書館の指定管理者制度]03年の改正地方自治法で、公共施設の管 理運営を民間も担えるようになった。日本図書館協会によると、全国430の公立図書館が導入(14年度現在)。東北では、ともに大手書店「丸善」が管理運 営する仙台市の広瀬図書館(青葉区)、榴岡図書館(宮城野区)など21館ある。

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