<ツタヤ図書館>知の拠点 問われる真価

宮城県多賀城市のJR仙石線多賀城駅前に21日開館した市立図書館は、駅前再開発という40年来の市の懸案を解決に導く切り札に位置付けられる。「東北随 一の文化交流拠点」「東日本大震災からの復興のシンボル」。菊地健次郎市長の言葉は期待の大きさを示すが、新図書館を核とした新市街地の形成は出発点にす ぎない。図書館の「独り勝ち」に終わらせず、知の拠点を市域全体の発展にどうつなげるか。正念場はこれからだ。
図書館はTSUTAYA(ツタヤ)を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者になる。斬新な意匠、東京・代官山の品ぞろえを取り入れた書店、カフェ、レストラン。施設には同社のノウハウが詰まる。
指定管理料の年2億7000万円は従来の図書館運営費の2倍以上になる。市は年間来館者は10倍の120万人、経済効果は50億円と見込んだ。費用対効果への疑問を打ち消す強気な数字にも映る。
多賀城駅前には図書館が入居する再開発ビルA棟と子育てサポートセンターなどが入るB棟が完成し、一帯の市街地形成は一段落した。市が向かう先は、文化交流拠点構想の完成だ。
古代多賀城の文化遺産、東北歴史博物館、催事を担う市文化センターなど新図書館と周辺の施設を結ぶ構想は、既に動きだした。
市は図書館と文化センターを結ぶ遊歩道の整備といったハード面に加え、まちづくりを担う人材育成に着手。開館に合わせ、多賀城版オペラ上演を含む世界絵本フェスタの開催などソフト施策も拡充した。
ハード、ソフト両面の施策がうまくかみ合うかは未知数だ。これまでの市のまちづくりはハード優先との指摘が強かった。施設に見合った行政サイドの意識改革が迫られる。
同社が先行して運営した2市の図書館では購入図書の選定などが批判された。運営への疑義は文化交流拠点構想の致命傷に成りかねない。不断のチェックもまた、求め続けられるだろう。
今回整備した「器」に、市がどう「魂」を入れていくか。その成否が問われようとしている。(多賀城支局・佐藤素子)

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