<トヨタ財団>災害住宅の交流支援

東日本大震災の発生から間もなく6年。東北の被災地では、多くの企業が復興支援をCSR(企業の社会的責任)に位置付け、活動を続ける。支援内容は地域コミュニティー、産業、教育と幅広い。震災の教訓を基に、本業を生かして被災地と歩む企業の取り組みを追った。(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業/復興へCSR幅広く

トヨタ自動車が設立した公益財団法人「トヨタ財団」(東京)は、災害公営住宅に居住する被災者のコミュニティー形成支援を岩手、宮城、福島3県で展開する。
2014年度に始まり、本年度はNPO法人など5団体に計3000万円を助成した。スタッフの人件費、茶菓子購入などイベント開催費に活用される。
原点は1995年の阪神大震災の教訓だ。災害公営住宅には高齢者が多く、引きこもりや孤独死が問題になった。財団事務局長の大野満さん(58)は「東北でも同じことが起き得る。外部の手助けが必要と判断した」と振り返る。
大崎市のNPO法人おおさき地域創造研究会は14年度から助成を受ける。市内には170戸の災害公営住宅があり、石巻市や宮城県南三陸町の被災者が入る。
同研究会は集会所で定期的に出張カフェを開催。入居者間や住民との交流を進めた。3年の活動で自治会結成、サークル活動の活発化などの成果が出始めた。
研究会事務局長の小玉順子さん(58)は「自立して活動している災害公営住宅もある。皆さんが地域に溶け込んで暮らせるよう、サポートを続ける」と話す。
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企業の社会的責任(CSR)。21世紀、世界の企業に浸透し始めた概念だ。東日本大震災後、東北の被災地には無数の企業が足を踏み入れ、試行錯誤を重ねた。艱難(かんなん)の地へ、生活の糧を、癒やしを、希望を。企業を突き動かした衝動は何だったのだろう。あれから間もなく6年。CSRを足掛かりに、あの日に返って経済社会を展望する。見えてくる明日を、私たちは「トモノミクス」と呼ぶ。

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