管理職全員が民間資格「防災士」を取得する取り組みを、NTTドコモ東北支社とドコモCS東北(仙台市)が進めている。東日本大震災で被災した東北のドコモグループとして、社員の防災意識を高める狙い。各職場のリーダーが持ち場を問わず高度な知識を学び、災害時の迅速な支援活動に生かす。
資格を持つ管理職は現在247人。3月に受検予定の1人を除き、全員が取得した。一般社員を含めると、取得者は東北のグループ全体の4分の1に当たる約400人に上る。
1月25、26日には研修と試験を東北支社で実施。管理職と一般社員合わせ約60人が合格した。CS東北青森支店(青森市)の木戸場由孝企画総務担当課長は「支店の防災を担当しており、とても参考になった。災害時は指導する立場の適切な判断が重要だと感じた」と手応えをつかむ。
管理職全員の資格取得は2016年度に始まり、ドコモグループでは東北だけの取り組み。日本防災士機構(東京)によると、企業や自治体が管理職全員に取得させる例は珍しい。
通信インフラを担うドコモは大規模災害発生時、技術系を中心に通信設備の復旧に携わる。総務や営業系は避難所での携帯電話の充電サービスなどを担う。
CS東北ショップ運営部の黒沢健販売企画担当課長は「震災では避難所を回ったが、現場で戸惑う場面も多かった。資格取得で得た知識を生かし、次の災害時は状況に応じた行動をしたい」と意欲を語る。
取得後も防災意識を維持させるため、東北支社災害対策室は防災関係の最新情報を集めた「防災士ニュース」を隔月で発行する。
同室の門口宏室長は「災害が大規模になれば職場に関係なく、全社的な対応が必要になる」と説明。「震災では全国の支社から応援をもらった。われわれが応援に回る際は、防災士の知識を生かしてより柔軟な支援をしたい」と話した。
[防災士]日本防災士機構が社会の防災力向上のための十分な意識・知識・技能を有する人を認証する資格。災害の歴史や仕組み、危機管理体制を学ぶ座学や避難所運営の図上訓練、救急救命講習などの研修を受講し、試験を受ける。1月末現在、全国で14万2984人が認証された。