欧米の祭りながら、日本でも秋の風物詩として定着しつつある31日の「ハロウィーン」。年々盛り上がりを増し、いまや市場規模はバレンタインデーに匹敵するほど。その楽しみ方にも変化が表れている。【太田圭介、大迫麻記子】
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◇市場規模、バレンタイン級
神奈川県藤沢市の大淵麻衣子さん(37)は無類のハロウィーン好き。今年は長女の結月(ゆず)ちゃん(2)のために、「不思議の国のアリス」の衣装を用意した。麻衣子さんは「私も豪華なドレスを着て親子で屋外イベントに出かけます」と意気込む。
ネット通販大手の楽天市場では9月のハロウィーン関連売り上げが2012年の1.7倍、11年の3倍に達した。一般社団法人日本記念日協会によると、今年のハロウィーン市場は1000億円を超える見通し。「ホワイトデー(約640億円)を既に超え、バレンタインデー(約1300億円)に迫る勢い」という。
ハロウィーンといえば、菓子類や小物など手ごろな商品が定番だったが、今年は1着5000円前後のコスプレ(仮装)グッズなどが人気。楽天の担当者は「『親子でコスプレ』が今年の流行。2着で2万円以上する高額品も現れた」。
ホテル日航東京(東京都港区)は、ハロウィーンを楽しむママ友パーティープラン(31日まで)を昨年から提供している。子ども用衣装を貸し出し、料理にカボチャの冷製スープやパンプキンパイが付く。最少催行人数(大人4人)で2万4000円(子どもは1人3000円)と値が張るが、担当者は「去年より問い合わせが多く、関心が高い」。
一方、アサヒビールは26日夜、東京・渋谷での大人向けイベントに米国産高級ウイスキーのジャック・ダニエルを初めて提供。ハロウィーンは子ども向けの行事から「大人も楽しめるゴージャスなイベント」へと進化しつつあるようだ。
もともとハロウィーンは古代ケルト人の収穫感謝祭で、移民によって米国に伝わった。キリスト教の万聖節の前夜(10月31日)、祖先の霊とともに悪霊が訪れるとされ、魔よけにカボチャをくりぬいて目鼻をつけたちょうちんを飾るほか、子どもが魔女や怪物に扮装(ふんそう)して近所からお菓子をもらう、米国風の秋祭りとして育った。ここ10年ほどで日本でも急速に浸透。川崎市で毎年行われる仮装パレードには、例年10万人を超える見物客が訪れる。
なぜ日本でこれだけ定着したのか。電通総研電通若者研究部の奈木(なぎ)れいさんは「古来、八百万(やおよろず)の神をあがめる日本人は、クリスマスなど外国の宗教的行事も楽しいイベントとして受け入れやすい国民性なのでは」と指摘。そのうえで「20代の若者と、幼児を持つ若い母親がけん引役」と見る。「リアルな場で仲間とつながることを重視する20代の若者はイベントを誰と楽しむかが重要で、仮装して一緒に盛り上がれるハロウィーンは絶好のネタ。若い母親は仮装させた子どもの写真をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で公開するなど、ファミリーイベントとして支持されたことも大きい」と分析する。