<バイク>メーカー、テコ入れに躍起 販売台数減少で

二輪メーカー各社が国内市場のテコ入れに躍起だ。販売台数は小型の原付きバイクを中心に減少に歯止めがかからず、大きな反転は見込めない。各社は比較的堅調な中・大型を中心にバイクの魅力を訴え、女性や若者向けの新店舗も出すなど新たな需要の掘り起こしに本腰を入れている。

【グラフでわかりやすく】バイクの国内販売台数は減少傾向が続く

 ホンダは今年2月、新店舗「ホンダドリーム川崎宮前」を披露した。店内には、17年ぶりに全面改良した排気量1800CCの最上位モデル「ゴールドウイング」など新車の他、人気の中古車や実際にレースで走った非売品のバイクも展示。「ぎっしり並べて、またがることもできない昔の『バイク屋』のイメージを払拭(ふっしょく)した」(担当者)という。展示車を厳選する代わりにジャケットやブーツなどの試着・販売コーナーを充実させ、ソファでくつろげる歓談スペースも設けた。

ホンダは5種類ある系列の販売店網を、4月から同店のような趣味性の高い高性能バイクをそろえる「ドリーム店」と、原付きなどの実用モデルを扱う「コミューター店」に再編した。販売子会社のホンダモーターサイクルジャパンの加藤千明社長は「量や規模より販売の質を追求する」といい、旗艦店と位置づけるドリーム店では利幅の厚い上級車を1台ずつ丁寧に販売する考えだ。

川崎重工業も1月、JR秋葉原駅近くの商業施設に半年限定のショールームを開いた。赤レンガ造りのおしゃれな店内では「カワサキ」ブランドのアパレルや雑貨を販売するが、バイクは主力の中・大型車を数台展示するのみで、その場では販売しない。あくまでバイクのあるライフスタイルを提案する場と位置づけ、バイクと縁が薄い女性や若者との接点にする狙いだ。

上級車種は価格帯が高く、若者には手が届きにくそうだが、販売子会社のカワサキモータースジャパンの谷敏明販売戦略部長は「今の若者はお金を大事に使う。目利き力があり、本当に良い商品は買ってくれる」と自信を示す。開設以来、直営店の5~10倍に当たる月間数千人が訪れているという。

ヤマハ発動機の販売子会社も1月から、排気量126CC以上のスポーツバイクを扱う販売店を全国に順次展開。整備や故障診断などの高い専門知識を持つ整備士を置き、質の高いサービスを提供する体制を整える。スズキも4月以降、最新モデルを集めた無料の試乗会を各地のサーキットなどで開く。国内市場の活性化に向けた各社の取り組みは今後も加速しそうだ。【和田憲二】

◇キーワード

二輪の国内市場 二輪は維持費が安く通勤・通学などにも便利なことから1970年代以降広く普及。日本自動車工業会によると、国内販売台数は82年に328万5000台とピークに達したが、その後は軽自動車や電動アシスト付き自転車の普及などで原付きバイクを中心に減少傾向にあり、2016年には過去最低を記録。17年は35万7264台と4年ぶりに前年を超えたが、これは16年の熊本地震でホンダの工場が被災し、生産が落ち込んでいた反動が大きい。ローンや子育てが終わり、もう一度バイクに乗ろうという「リターンライダー」世代を中心に中・大型は需要が底堅く、各社の主戦場となっている。国内は半世紀近くホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業の寡占が続く。

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