<ボージョレ>果実味華やか、円高の恩恵も 18日解禁

フランス産ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」が18日、解禁される。一時のお祭り騒ぎのような「ボージョレ狂騒曲」は影を潜めるが、季節ものだけに、やはり気になる。今年の出来は? 15年ぶりの円高の影響は?【鈴木梢】
 ソムリエの田崎真也さんは「今年は、新酒の典型のようなみずみずしさが楽しめる年」という。09年のブルゴーニュ地方は猛暑で、ブドウが完熟してワインも凝縮した味に仕上がったが、今夏は比較的涼しく、ゆっくり成熟したという。「酸味がフレッシュで、赤い果実が持つ華やかな香りが楽しめ、冷やして飲むヌーボーにはぴったり」と田崎さんは評価する。
 イベント性が高く、景気や流行に左右されやすいヌーボー。バブル期には、時差により本場フランスより早く飲めることなどから盛り上がり、解禁日未明に成田空港に行き乾杯する人まで現れた。90年代後半の赤ワインブームも追い風となり、輸入量は04年に約939万リットルに達した。
 しかし05年以降は、輸入業者が過剰在庫を抱え、店頭には年を越しても売れ残ったボトルが並ぶように。輸入量は5年連続で減少し、09年は約450万リットルとピーク時に比べ半減した。
 だが、各社は今年を「転換の年」と見る。昨年は、輸入量こそ減ったものの、売れ行きが近年になく好調で、メルシャンは「約10日間ですべて売り切った」。「50年に1度の当たり年」と絶賛されたことが一因だった。瓶より軽量なペットボトルに詰めて空輸費をカットした低価格商品を売り出すなど、目新しさでもアピールした。
 各社とも「需要と供給のバランスがとれ、市場が適正になってきた」と口をそろえる。メルシャンは、今年の販売数量を約75万本と前年比5%増を見込む。サントリーは日本への輸入量が前年比1割増に持ち直すと予想。「一過性のブームで飲むのではなく、ワインの季節や文化を理解して飲む層がしっかり定着した」と分析する。
 円高の恩恵が気になる価格はどうか。
 商品の価格が6月ごろに決まっていることなどから、メーカーの多くは価格を前年並みに据え置く考え。サントリーは「仕入れ値や物流コストが値上がりしているが、円高もあって価格は前年並みの2300円(750ミリリットル入り)程度」としている。量販店では、イオンが一部の事前予約商品を円高還元のため100円引きの880円(同)としたほか、西友も990~1180円(同)と「円高を価格に反映させている」という。
 ワインに精通する料理評論家の山本益博さんは「ヌーボーは本来、その年のワインの出来を占うもの。ヌーボーでない、熟成された大人のボージョレの味こそ知ってほしい」と話す。とはいえ、ヌーボー解禁にはブドウの収穫祭の意味合いもある。田崎さんは、旬や新物に敏感な日本人として、新酒そのものを楽しむことを提案。今年のヌーボーと相性がいい料理として「豚肉のしゃぶしゃぶ」を提案する。鍋と新酒で深まる秋を楽しみたい。
 【ことば】ボージョレ・ヌーボー
 仏ブルゴーニュ地方南部のボージョレ地区で収穫されたガメイ種のブドウで造られた新酒の赤ワイン。解禁日は11月の第3木曜日と定められている。日本の輸入量は世界一で、全体の4割以上を占める。

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