<ラグビーW杯>釜石当選に破顔 復興の力に

ラグビーの2019年ワールドカップ(W杯)日本大会の開催地が発表された2日夜、東北の候補都市は選出された釜石市と選外となった仙台市とで明暗がくっきり分かれた。

◎選外の仙台ため息

釜石市鵜住居町根浜の旅館宝来館では、発表記者会見のパブリックビューイングがあり、行政やラグビー関係者、市民ら約120人が決定の瞬間を見守った。「釜石」がコールされると「やった!」と声が上がり、復興途上の「ラグビーの聖地」が歓喜に包まれた。
海沿いにある宝来館は震災の津波で2階まで浸水。営業再開を果たし、4月にはW杯開催に向けて新装オープンする。新設されるスタジアムはすぐ近く。おかみの岩崎昭子さん(58)は「震災後は生きることで精いっぱいだった。やっと未来に向けて歩き出せる」と涙ぐんだ。
野田武則市長は「唯一スタジアムがない小さな街の挑戦は、被災した三陸沿岸地域全体の再生と未来への希望につながると信じる」と気を引き締めた。
W杯誘致は震災直後の11年8月、日本選手権7連覇した新日鉄釜石ラグビー部OBらでつくる復興支援NPO「スクラム釜石」が市に提案したのが契機だっ た。市民運動で機運を盛り上げてきたW杯釜石誘致推進会の中田義仁代表(46)は「子どもたちが未来に希望を持つことが復興の力になる。釜石だけでなく広 く子どもたちがラグビーと親しむ機会をつくりたい」と笑顔を見せた。達増拓也岩手県知事は「被災地支援への感謝を世界に伝え、復興の姿を発信する絶好の機 会になる。復興に取り組む県民にとっても朗報だ」との談話を出した。
仙台市では、青葉区の飲食店に誘致運動に携わった宮城県ラグビー協会関係者やラグビーファン約30人が集まった。選外が分かると一様に肩を落とし「あー」とため息を漏らした。
県ラグビー協会の福冨哲也会長(69)は「本当に残念。開催地には選ばれなかったが、若者の教育などにラグビーの精神を生かす活動を地道に続けていく」と 厳しい表情で語った。奥山恵美子仙台市長は「開催はかなわなかったが、外国のお客さまに震災を乗り越えた仙台・東北の復興の姿をご覧いただけるよう取り組 む」とのコメントを出した。

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