警察庁が今年上半期(1~6月)に主にヤミ金融に悪用された携帯電話のレンタル業者を調べたところ、偽造された身分証明書で貸し出していた業者が約74%に上ったことが分かった。不適正とされる笑顔の写真が貼り付けられた免許証など簡単に偽造と見破れるケースもあった。同庁は犯罪に使われると知りながら貸し出した場合には、ほう助犯として今後積極的に摘発するよう全国の警察本部に指示した。
携帯電話不正利用防止法によれば、客に貸し出す際は本人確認を行い、書類を3年間保存する義務がある。違反すれば2年以下の懲役か300万円以下の罰金だ。ただ、立件には「故意に確認を怠った」ことを立証しなければならない。
全国の警察は、上半期に勧誘や連絡などヤミ金犯罪に使われた1506台について、貸し出した133の業者に客との契約を解約するよう要請。このうち特に対面式で契約していた109業者について本人確認の書類を調べたところ、81業者が偽造された免許証のコピーなどを保存していたという。
岩手県警が5月に同法(本人確認義務)違反容疑で摘発した東京都渋谷区の業者の場合は、免許証のコピー151枚を保管していたが、このうち129枚が偽造と判明。ヤミ金から現金を借りた人が無断で契約名義人にされていたケースもあった。この業者は「身分を確認せずヤミ金業者にレンタルしていた」と認めたが、「偽造には気付かなかった」と釈明する場合が多く、上半期の摘発は6事件にとどまる。
また、レンタル業の開業に届け出や許認可は必要ない。営業実態が不透明な業者も多く、ヤミ金だけでなく振り込め詐欺グループに貸し出す業者も多いとみられる。同庁幹部は「ヤミ金グループなどとの関連を重点捜査し犯罪ツールを遮断したい」と話す。【川辺康広】