全国有数のアワビの水揚げを誇る三陸沿岸の漁師が、昨年度から続く不漁に頭を抱えている。稚貝が東日本大震災の津波で流されたことに加えて餌の海藻類が岩場から消失する「磯焼け」が深刻化し、漁を取りやめる漁協もある。関係者は対策に懸命だが、個体数の減少による影響は来年度以降も続く可能性がある。
大船渡市三陸町綾里地区は11日が12月最初の口開けだったが、漁を途中で切り上げる漁船が相次いだ。「燃料費を考えれば割に合わない」と出漁を見合わせる漁師もいた。
岩手県漁連によると、震災前に年300~400トン台だった水揚げ量は12年度以降、200トン台で推移。17年度は147トンに落ち込み、津波で多くの漁船が流失した11年度に次ぐ不漁となった。本年度も12日時点で111トンと昨年度並みの低水準にとどまっている。
越喜来漁協(大船渡市)は来年度以降の資源保護を見据え、一部の海域で12月の漁を取りやめた。
宮城県内も同様だ。南三陸町歌津の県漁協歌津支所では11月25日と12月3日に漁を実施。水揚げ量は25日が約3.3トン、3日が約2.8トンと、昨年に比べて2割程度減っている。
震災後の12年に漁を再開したが、水揚げ量は減少傾向にある。阿部美津雄支所長は「震災後は稚貝を確保できず、まとまった数の放流ができなかった。温暖化による海水温の上昇といった環境の変化も影響しているのではないか」と推測する。
岩手県水産技術センターによると、震災時の稚貝は本来なら漁獲対象の大きさに育っているはずだが、津波で流されて死滅してしまった。
さらに震災後に大量発生したウニに餌となるコンブを食べ尽くされ、アワビの生育が阻害されている。成長が遅れて長く海中にとどまっている分、タコなどに食べられてしまうリスクも高まっている。
各浜は対策に奔走する。宮城県内では、大学や研究機関が連携してロボットを使ったウニの駆除などの研究を進める。宮古市は本年度、養殖コンブを海底に移植する実証事業に着手した。
同センターの西洞孝広増養殖部長は「津波による稚貝減少の影響は再来年ごろまで続くのではないか」とみている。