東日本大震災からの復興道路として国が整備する三陸沿岸道路(仙台市-青森県八戸市、総延長359キロ)が延びる岩手県沿岸で、物流や観光が活性化しつつ ある。アクセス改善を見越した企業進出や移動時間の短縮を生かした観光誘客が加速してきた。2018年度には6割の開通を見込む三陸沿岸の大動脈。沿岸被 災地の期待が高まる。(山形聡子)
<半日早く到着>
三陸沿岸道路釜石北インターチェンジから1キロほど東の岩手県釜石市片岸町。物流大手福山通運(広島県福山市)のグループ会社東北王子運送(福島県須賀川市)の釜石営業所の建設が進む。
同社初の岩手県沿岸の配送センターで年度内の操業開始を目指す。久慈市にも新たな営業所を置く。福山通運の小林哲平常務執行役員は「釜石は企業進出が進み、配送や集荷の需要が増える。道路環境の改善で時間短縮の効果が見込める」と進出理由を説明する。
岩手県沿岸部への配送は現在、盛岡市や北上市などの営業所を経由する。三陸沿岸道路整備後は、直結する仙台市から直接、沿岸部に配送できる。荷物の到着は半日程度、早くなる見込みだ。
釜石市は縦軸の三陸沿岸道路に加え、東北道につながる横軸の東北横断道釜石秋田線の結節点。重要港湾の釜石港もあり、物流拠点として注目度が高まった。
震災後、市内に進出した企業は食品加工や太陽光パネルの物流倉庫など6社。震災前は10年間でわずか3社だった。市企業立地課の関末広課長は「企業は道路と港湾がセットになっていることを利点と捉える。県とも連携し、さらに誘致を進めたい」と話す。
<北海道で誘客>
動脈の誕生は観光誘客にもつながる。川崎近海汽船(東京)は18年春、宮古-室蘭間で県内初となるカーフェリーの運航を始める。
好機を生かそうと、県や宮古市などは昨年11月、北海道で初の誘客イベントに乗りだした。修学旅行の誘致を軸に旅行会社や学校関係者を招きセミナーを開催。被災地での震災学習や三陸ジオパーク、世界文化遺産になった橋野鉄鉱山(釜石市)などを紹介した。
広い県内には多彩な観光資源がそろうが、長い移動時間がネックだった。人口160万を超える仙台都市圏と直結することも観光活性化の要素になりそうだ。
県の山田麻紀三陸観光再生特命課長は「三陸沿岸道路開通で都市間の移動時間が短くなれば、周遊範囲は格段に広がる。誘客効果は大きい」と期待する。