<五輪会場変更>ボート宮城案「ベストな案」

2020年東京五輪・パラリンピックのボートとカヌー・スプリントの競技会場について、東京都の調査チームは29日、都内の「海の森水上競技場」から宮城県長沼ボート場(登米市)などへの変更を検証するよう求める報告書を公表した。調査チームメンバーからは、「『復興五輪』の原点に返れば、長沼はベストな場所」と宮城開催を支持する声が出た。
報告書によると、「海の森」は整備費が招致段階の69億円から491億円に膨らみ、都が新設する7カ所の恒久施設の中で2番目に高い。水位の変動に対応するための堤防や水門の整備が経費増の要因となった。
調査チームが五輪競技会場として「検討可能な河川、湖の例」と示したのは表の通り。長沼は国際競技団体の基準に適合する点などが評価されている。
小池百合子都知事も同日、調査チームの報告に対し「『海の森』は水位調節など費用が高く(大会後の)ランニングコストの検討も必要」と施設維持に懸念を示し、変更が可能かどうか検討する考えを示した。
報告書はまた、カヌーやボートは競技人口が少なく、競技者1人当たりの五輪会場の建設費が大きくなると強調。国が全国から適地を選び、整備費を負担するのが望ましいとの見解を示した。
調査チームを統括する上山信一慶応大教授は報告書公表後に記者会見し、「『復興五輪』のはずが、被災地で開催される競技はわずかしかない。理念に照らせば全国でベストなのは長沼かもしれない」と語った。
長沼に変更する場合、仮設観客席など会場整備費は351億円と試算された。ほかに会場運営のため周辺の用地を買収または借り受けする費用や、出場選手が宿泊する選手村を「分村」し整備するコストも発生する。「海の森」は7月に一部建設工事が着工済み。変更すれば都が契約企業に違約金を支払う必要もある。
上山氏は「(五輪の)大会組織委員会や国のサポートがないと進まない」と指摘した。

[宮城県長沼ボート場]90年、インターハイ開催に合わせて宮城県が登米市迫町の長沼に1000メートルのコースを整備。98年の拡張で、国内唯一の常設2000メートル8レーンのコースとなった。国際大会が開催できる日本ボート協会公認A級コースで、99年にシドニー五輪(00年)予選を兼ねたアジア選手権が開かれた。今年8月に全日本新人選手権が初開催され、来年8月にインターハイのボート競技会場となる。県ボート協会が指定管理を受け、リサイクル業のアイエス総合(登米市)が命名権(ネーミングライツ)を取得している。

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