仙台空港を運営する仙台国際空港(名取市)が、貨物取扱量拡大に向けた取り組みを強化している。民営空港ならではの営業戦略で荷主のニーズに応じた条件を提案。農産品や工業製品など新たな荷物を誘致し、国際線の貨物輸送再開も実現した。東日本大震災で落ち込んだ取扱量の回復にはまだ遠いが、2018年度下期は前年に比べ倍増する見込みだ。
<成田より早い>
農業生産法人GRA(宮城県山元町)は18年12月、栽培する「ミガキイチゴ」の台湾向け輸出を仙台空港からの便に切り替えた。現在は台湾・エバー航空の仙台-台北線で週1回、130~150キロほどを運ぶ。
栽培施設から仙台空港までは車で約30分。収穫翌日に持ち込み、2日後の午前には台北の店頭に並ぶ。成田空港経由の17年収穫期よりも店着が1日早い。
GRAの担当者は「イチゴは日持ちが短く、収穫から店着までの時間は重要。今は成田や羽田を使っているタイや香港、シンガポール向けも仙台空港から輸出できればありがたい」と路線拡大を期待する。
仙台空港の貨物取扱量はピーク時に2万トンを超えたが、貨物専用機の撤退や08年のリーマンショックなどで減った。震災では国際貨物棟が被災し、機能が一時停止した。
この間、多くの貨物が成田空港などに流出し、11年度の取扱量は前年の3割の3037トンに激減。12年度以降も6000トン前後にとどまっている。
16年の仙台空港民営化以前は、宮城県の第三セクターが貨物事業を担当。需要開拓は物流会社への要請などが中心だったが、仙台国際空港は荷主や航空会社と直接交渉する。それぞれのニーズや課題を把握した上で条件を提示し、貨物の誘致を図る。
<検品請け負う>
航空機部品製造のエアロエッジ(栃木県足利市)は18年9月、仙台空港での製品輸出入を始めた。エンジン用部品が仙台空港と台湾を経由し、北米との間を行き来する。
決め手は仙台国際空港の提案だった。同社は、生産工程の人員が不足していたエアロエッジから輸出する製品の検品作業を請け負った。空港運営会社が荷主業務を受託する事例は「知っている範囲ではない」(仙台国際空港)という。
荷物を誘致することで貨物輸送の路線も広がる。エバー航空は仙台-台北線で安定的な需要が見込めないとして輸送を中断していたが、GRAとエアロエッジとの交渉が進んだことで再開を決めた。
仙台国際空港は44年度の貨物取扱量2万5000トンを目標に掲げる。営業推進部貨物営業グループの伊良波長治チーム長は「荷主にとって付加価値がなければ大きな空港には対抗できない。今後もニーズを見極めた提案したい」と話した。