<仙台空港>運用時間延長 読めぬ旅客ニーズ

7月に完全民営化した仙台空港について、宮城県は運用時間(午前7時半~午後9時半)の延長を見据えた本格的な調査に乗り出す。村井嘉浩知事は運用時間が広がれば就航本数が増えると算段し、24時間化も視野に入れる。実現には旅客需要の取り込みに加え、地域の理解が不可欠。騒音への懸念払拭(ふっしょく)など打開すべき課題は少なくない。

<2次交通が鍵>
仙台空港に就航する航空各社は、運用時間の延長をそろって期待する。
日本航空東北支店(仙台市)の筈見昭夫支店長は「選択肢が増え、増便の検討が可能」と歓迎。格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションも「多様な路線設定ができる」(広報グループ)と喜ぶ。
LCCの参入が相次ぎ、旅客の開拓や争奪に懸命な航空業界。機体を効率良く飛ばして収益率を上げるには、夜間を含めたダイヤ設定の幅が前提となる。
時間延長は国土交通省の許可が必要で、延長時間帯に航空会社が確実に定期便を飛ばすことが条件となる。旅客ニーズの見極めが重要だが「延長は歓迎でも、増便できるかどうかは何とも言えない」(全日空広報部)と、現時点では各社とも具体的な計画はない。
日航の筈見支店長は「2次アクセスの改善をセットで進める必要がある」と提案。空港とJR仙台駅を結ぶ仙台空港アクセス線を早朝や夜間に増発しなければ、旅客の伸びは期待できないと指摘する。

<「動きを注視」>
空港の地元は複雑な反応を見せる。名取市は「就寝時間帯の発着となれば、騒音への不安が広がる恐れがある」と懸念する。
航空各社は、航空機の小型化やエンジンの性能向上で「騒音は小さくなった」と理解を求める。滑走路から内陸部方向に離陸する際は住宅地の間近を避ける飛行法も実施するが、住民の不安は拭いきれない。
名取市の担当者は「空港活性化は生活環境とのバランスが大切」と強調、岩沼市も「延長への動きを注視していく」と慎重だ。
空港近辺の住民らでつくる名取市仙台空港周辺対策協議会の大友昇会長は「時間延長がまちづくりに好影響を与え、心から賛同できるものかどうかを丁寧に説明してほしい」と望む。
県は、県議会11月定例会に時間延長に関する調査費約3000万円の予算案を提出し、見通しなどを説明する方針だ。
空港の長期目標は「旅客550万人、貨物2.5万トン」(15年度は311万人、0.6万トン)。時間延長は目標実現への有効な手段となる。県と足並みをそろえる運営会社の仙台国際空港(名取市)は「地元の総意が得られるよう対話に努めたい」と話す。

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