仙台農協(仙台市)が、農家の高齢化対策や耕作放棄地の拡大防止などを目指し、農作業支援隊を結成した。メンバーは現役職員や再雇用のOBら、農作業に精通する5人。労働力が不足する生産現場の力強い助っ人として、組合員をサポートする。
支援隊は7月下旬に本格的な活動を開始。仙台市青葉区芋沢にある約2ヘクタールのソバ畑では、メンバーらが慣れた手つきでトラクターを運転し、畑起こしや施肥、種まきなどをこなした。
依頼した宮城実践組合ではソバや大豆の農作業などが重なった時期に従業員が病気で倒れ、人手が足りなくなった。組合長の千坂幸衛さん(76)は「支援隊のおかげで作業が進み、本当に助かった」と話した。
支援隊長の渡辺邦夫さん(58)にとっては約6年半ぶりの農作業だった。東日本大震災前は農業に携わっていたが、津波で農機具などを失った。「やっぱり農作業はいい。組合員の役に立ちたい」と笑顔を見せた。
仙台農協は、越智今治農協(愛媛県今治市)の支援グループ「心耕隊」からヒントを得た。同農協とは震災復興の支援で職員派遣を受けた縁があり、2012年12月に姉妹協定を締結。支援隊の結成にあたり、取り組みを参考にした。
支援隊は種まきや草刈り、果樹の枝切りに加え、増加する鳥獣の食害対策として、イノシシを捕獲する柵の設置なども想定する。仙台農協では65歳以上の正組合員が全体の63%を占め、高齢化が進む。やむを得ない事情で作業が滞りそうな農家に有償で派遣し、営農を積極的に支える方針だ。
宮城県内の農協が農作業の助太刀にまで乗り出すのは珍しい。菅野育男組合長は「耕作放棄地をこれ以上増やさないために、農協としての役割を行動を通して果たしたい」と意気込む。