仙台市宮城野区の仙台港に建設された関西電力系の石炭火力発電所「仙台パワーステーション」(PS、東京)を巡り、試験運転の事後報告や住民への説明不足など事業者に対する批判が宮城県議会6月定例会で噴出している。与野党議員は県の指導力不足にも不満を募らせ、「脱石炭」を軸に据えた環境対策の強化を求める声が高まっている。
「石炭火発が乱立し、県に危機感はないのか」。4日の環境生活農林水産常任委員会で、共産党県議団の中嶋廉氏は温室効果ガスの抑制対策に乗り出す必要性を強調した。
中嶋氏は、奥山恵美子仙台市長が6月下旬に環境省を訪れ、石炭火発の設置を許可制にするなどして歯止めをかけるよう要望した経緯を指摘。「既存の法律や条例では限界がある。県が先頭に立って国に政策提案すべきだ」と訴えた。
6月26~30日の一般質問と予算特別委員会でも、登壇した3人が取り上げた。
最大会派「自民党・県民会議」の相沢光哉氏は、仙台PSが自主的な環境影響評価(アセスメント)を避けたことに触れ、「住民からすれば事業者に何ら有効打を放てず、頼りにならない」と県を批判した。
仙台港では四国電力なども石炭バイオマス混焼火力発電所の建設を計画しており、相沢氏は「環境悪化が他企業の県外脱出を誘発しかねない」と懸念する。
事業の立案段階から環境影響を予測し、住民の意見を取り入れる「計画アセスメント」を事業者に義務付けるよう提案したのは、民進党系「みやぎ県民の声」の坂下康子氏。24都道県が制度を採用している現状を報告し、「導入を検討すべきだ」と迫った。
村井嘉浩知事は仙台PSへの対応について「建設工事に着手しており、現時点で自主アセスの指導は難しい」と説明。「地域住民とのコミュニケーションに努めるよう働き掛ける」との説明を繰り返している。
◎七ヶ浜で説明会
仙台市宮城野区の仙台港で試験運転を始めた関西電力系の石炭火力発電所「仙台パワーステーション」(PS、東京)は13日午後6時半から、七ケ浜町中央公民館で住民説明会を開く。発電所の2~8キロ圏に住宅地がある町の要請を受けた。
町によると、説明会は町民対象で、町の担当者も出席。仙台PS側が施設の概要や環境への影響を説明し、質疑に応じる。
仙台PSは6月12日に重油を使って試験運転をスタート。今月中旬から発電を開始し、下旬に石炭燃料を投入、10月から首都圏向けに売電する見通し。出力は11万2000キロワット。