国土交通省は21日、2017年1月1日現在の公示地価=?=を発表した。東北では東日本大震災の沿岸被災地で住宅再建など移転需要の収束傾向が強まる一方、宮城県は15年12月の仙台市地下鉄東西線の開業効果などで住宅地、商業地とも上昇率が全国2位となった。福島県は東京電力福島第1原発事故に伴う避難者の移転などの動きを背景に住宅地が4年連続、商業地が3年連続で上昇したものの、伸びは鈍化した。
東北6県と仙台市の平均地価と変動率は表の通り。東北全体では住宅地がプラス0.8%(前年0.5%)と3年連続で上昇。商業地は仙台市が全体をけん引する形で同0.7%(同マイナス0.1%)と25年ぶりに上昇に転じた。
住宅地は宮城が調査地点の71%、福島が67%で値上がりした。仙台市は地下鉄東西線の沿線需要が引き続き旺盛。若林区白萩町の変動率が全国トップのプラス12.3%になるなど、沿線7地点の上昇率がいずれも10%を超え、全国10位以内に入った。
一方、沿岸被災地は災害公営住宅の完成などを受け、石巻、気仙沼、釜石各市などで上昇率が鈍化した。陸前高田、大船渡両市は上昇から横ばいになった。
県庁所在地の住宅地は盛岡、仙台、山形各市で上昇率が伸び、福島市は縮小した。青森、秋田両市は下落幅が改善した。
商業地は宮城県で調査地点の69%、福島県で60%が上昇した。仙台市はJR仙台駅周辺で新規投資が活発化。オフィス空室率の改善が続き、地価を押し上げた。
工業地は、仙台市4地点の上昇率が全国10位以内に入った。東北の物流拠点として存在感が高まり、仙台港や東北自動車道などのインターチェンジに近い用地が高値で取引された。
秋田県は住宅地、商業地、工業地とも下落率が前年に続いて全国最大だったが、下げ幅は縮小している。
東北の調査地点は計1865カ所。このうち原発事故の避難指示区域内の12カ所は休止した。
[公示地価] 国土交通省の土地鑑定委員会が地価公示法に基づいて公表する土地の価格。一般の土地取引の指標となる。今回の調査地点は住宅地、商業地、工業地の計2万6000カ所(うち福島県の12カ所は休止)。他の指標は都道府県が7月1日時点の地価を公表する基準地価、国税庁が公示地価を基に算出する路線価などがある。