宮城県南三陸町は、東日本大震災の震災伝承施設の基本計画案で「アート空間による伝承」を特色に掲げた。2021年4月の開館を目指し、他地域の伝承施設と差別化を図る狙いだが、震災とアートを結び付けることに、住民の賛否が分かれている。
計画策定を担う仙台市のプランニング会社が4月の検討委員会で、震災伝承施設の機能として災害学習と記録保存、交流の3点を示した。
核となる災害学習機能は、震災を表現して悲しみや祈りを共有するアート空間と、学習プログラムを体験できるコーナーを中心に構成。震災遺物や津波資料の展示を軸とするのではなく、アートや町民の被災体験に基づいたプログラムによる伝承に主眼を置く。
5月下旬に町内2カ所で住民説明会があり、約25人が参加。アート伝承について「斬新な切り口」「挑戦が集客につながる」などの評価があった一方、「飛躍している。奇をてらわず震災を忠実に伝えることが大事」「手段として理解できない」といった批判があった。
他には「担当するアーティストを選択する際には町民の声を反映してほしい」との声も出た。
町は6月中に基本計画をまとめ、7月から基本設計に入る方針。及川明企画課長は「アートは分かりづらい部分もあり、内容をしっかり検討する必要がある。基本設計が完成したら住民の意見を聞く場を設けたい」と話した。