企業年金の一種、厚生年金基金(約560基金)に解散を促すことや、専業主婦らの年金切り替え漏れへの対応を盛り込んだ年金制度改革関連法が19日、参院本会議で自民、民主両党などの賛成多数で可決、成立した。同基金全廃方針を撤回し、財政が健全とされる約1割の基金は存続を認めた。国に代わって厚生年金の一部を運用している同基金の存続を認めたことで、厚生年金の支給に必要な資金を欠く「代行割れ」基金が残る可能性もある。
AIJ投資顧問による年金消失事件を受け厚生労働省は民主党政権下の2012年秋、全基金を10年で全廃する案を打ち出した。
だが、自民党政権は関連法で厚生年金の支給に必要な額の1.5倍以上の資産を持つ基金など約1割は存続を認めた。代行割れ基金には来年4月の法施行から5年以内に解散か他制度への移行を促す。5年を過ぎても資産が基準額に満たない基金には厚労相が解散命令を出せる。また民主党の要求で付則に「政府が10年以内に(全基金を)解散するよう検討する」との文言を入れた。ただ、解散命令は「できる」というだけで、裁量の余地は残る。
代行割れの揚げ句、母体企業が倒産すれば年金の負債は厚生年金全体の保険料で穴埋めされる。田村憲久厚労相は「強制的にやめれば財産権、期待権の問題も出る」と理解を求めるが、専門家の間からは「基金と無縁の厚生年金加入者には存在しないはずのリスクを押しつけられるようなもの」との批判も出ている。【佐藤丈一】