原発事故時に周辺住民が避難などをすることで、どの程度被ばくを低減できるかを日本原子力研究開発機構が予測し、30日、原子力規制委員会に報告した。原発から5キロ圏内の住民は、放射性物質の大量放出前に、原子力災害対策指針で「緊急防護措置区域(UPZ)」とされた約30キロ圏外へ避難すれば、被ばく量は100分の1以下に抑えられると分析した。
原発立地・周辺自治体は、これらの分析や、事故時の放射性物質の拡散予測などを参考に来年3月までに地域防災計画を策定する。
予測は出力110万キロワットの原発で、福島第1原発事故の半分程度の放射性物質が放出される事故が起きたと想定。代表的な248パターンの気象条件での放射性物質の拡散状況を計算。その上で、原発からの距離ごとの被ばく量を基に、避難や屋内退避、甲状腺被ばくを防ぐとされる安定ヨウ素剤の服用などの効果を算出した。
その結果、原発から10~30キロは1週間の屋内退避で木造家屋なら4割程度、コンクリート製施設なら2割程度の被ばく量になると予測した。安定ヨウ素剤は、放射性物質が放出される前に30キロ圏で服用すれば高い低減効果があると指摘した。
5キロ圏内では、約30キロ圏外に予防的に避難すると、被ばく線量を国際原子力機関(IAEA)の基準以下(全身被ばくで1週間で100ミリシーベルト以下など)に抑えられ、避難しない場合に比べ100分の1以下になった。5~10キロではコンクリート建物内に退避(2日間)した後に30キロ圏外に避難(7日間)した場合や、10~30キロでは屋内退避した場合にもIAEAの基準以下に抑えられた。
同機構の本間俊充・安全研究センター長は「計算はあくまで一例であり、実際にどういうタイミングで避難などの指示が出せるかが重要だ」と話す。【西川拓】