東北電力の海輪誠社長は28日、福島県庁に佐藤雄平知事を訪れ、浪江・小高(おだか)原発(福島県浪江町、南相馬市小高区)の新設計画を断念することを伝えた。原発新設計画の断念は、福島第1原発事故以降、全国で初めて。
東北電力によると、予定地が東日本大震災による東京電力福島第1原発事故後に警戒区域となり、事故の影響で地元の理解を得られる見通しが立たないため、建設不可能と判断したという。
浪江・小高原発は出力82万5000キロワット。予定地は津波で浸水し、原発事故で全域が警戒区域となった。東北電力は、16年度着工、21年度運転開始としていた計画を、昨年3月に経済産業省に提出した電力供給計画の中で「未定」と変更していた。小高区側は昨年4月に避難指示解除準備区域になり、浪江町側も来月1日に同区域に変わる。
浪江町の馬場有町長、南相馬市の桜井勝延市長は原発事故の直後、立地を認めない考えを表明。南相馬市議会は建設中止の決議を、浪江町議会は誘致を白紙撤回する決議を、ともに11年12月に全会一致で可決した。両市町とも11年度以降、浪江・小高原発計画に伴う電源立地等初期対策交付金を辞退している。
南相馬市の桜井市長は取材に「東北電力から何も聞かされていないが、断念するのであれば私たちの意思通りだ」と語った。浪江町の原発立地を担当する谷田謙一・復興推進課長は、「原発事故で全町避難という被害を受けた町として(東北電力の)断念は当然だ。もっと早く対応してほしかった」と話した。【山越峰一郎、高橋秀郎、蓬田正志】