東北随一の歓楽街・国分町(仙台市青葉区)周辺で、居酒屋の従業員らによる客引き行為「キャッチ」が一向に減らない。東日本大震災後、国分町では居酒屋が 急増。復興バブルは1年ではじけ、生き残りを懸けたキャッチ頼みの集客合戦が激化した。キャッチの間に「たばこをポイ捨てしない」など自己規制の動きが出 ているが、罰則強化を求める声もある。(報道部・氏家清志)
<「街のゴキブリ」>
「まるで街のゴキブリ。見た目が悪く、うじゃうじゃたむろしている」。国分町に隣接する一番町でバーを営む男性(38)が吐き捨てるように言った。
7日午後8時ごろ、目抜き通りの広瀬通に面した一番町4丁目の東映プラザビル前。黒いエプロン姿の若い男女約20人が、街行く人々に手当たり次第に声を掛けていた。道路の真ん中まで出て、しつこく声を掛ける姿もあった。
「通行の迷惑」「怖くて歩けない」「仙台のイメージが悪化する」。地元商店街に苦情が寄せられるようになったのは、震災2年後の2013年ごろからという。
復興バブルを背景に国分町では居酒屋が急増したが、バブルは1年足らずではじけた。生き残りを懸け、店がある国分町にとどまらず、100メートル以上離れた一番町アーケード街にキャッチ行為が拡大した。
<摘発例はわずか>
性風俗店やキャバクラの客引き行為は、宮城県迷惑防止条例で禁じられている。居酒屋の場合、摘発の対象となるのは「しつこい行為」に限られる。
仙台中央署は2013年7~8月、同条例違反容疑で居酒屋従業員3人を逮捕したが、集客合戦に明け暮れる居酒屋にとって一罰百戒にはならなかった。
道路上でたむろするなどしたキャッチに対し、道交法違反(通行妨害)などで中央署が14年に出した警告は133件。15年は6月末現在、既に85件に上り、いたちごっこが続く。
<罰則強化の声も>
朗報は、キャッチを使う居酒屋側に綱紀粛正の動きが出始めたことだ。国分町の飲食店13店の若手経営者らが23日、親睦団体「SENCE(センス)」を立ち上げ、初めて自主規制に乗り出す。
SENCE代表に就任予定の鎌田大志さん(23)=居酒屋わいわい国分町通り店店長=は「国分町が好きでみんな商売している。客引きの見た目などで街のイメージを損ないたくない」と話す。
キャッチの迷惑行為に悩まされてきた一番町四丁目商店街振興組合は「自主規制による効果がない場合、最終手段としてより厳しい条例の制定が必要になる」と訴える。