<国立西洋美術館>推薦10年「報われた」…世界遺産登録へ

◇上野は祝賀ムード

国際記念物遺跡会議(イコモス、本部・パリ)による国立西洋美術館本館(東京都台東区)の世界文化遺産登録勧告から一夜明けた18日、上野公園にある美 術館前ではフランスの巨匠ル・コルビュジエが手掛けた名建築を早速写真撮影する人たちの姿が見られたほか、地元では関係者が改めて朗報を喜び、祝賀ムード に包まれた。【柳澤一男、早川健人、五味香織】

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国立西洋美術館には開館時刻の午前9時半前、入場券を求める人の列ができていた。江戸川区の無職、神保節夫さん(76)は「これまで建物自体に興味はな かったが、ニュースを聞いて興味が生まれた」と話し、スマートフォンで建物の写真を撮っていた。校外学習で同級生3人と上野公園を訪れた茨城県桜川市立岩 瀬西中2年の仁平千菜(にへいゆきな)さん(13)は「昨夜のテレビニュースで見た。建物だけを見に来たが、いい記念になった」と喜んでいた。

2007年9月に仏政府が日本政府にル・コルビュジエの建築作品について共同推薦を持ちかけた際、国立西洋美術館が初めて世界遺産になる可能性を知った 台東区は、09年5月に世界遺産登録推進室を設置、文化庁や都、仏政府などと調整を進めてきた。この日、区役所1階入り口に「世界遺産登録勧告」と書いた 横約3メートル、縦約50センチのボードを掲げた。

記者会見した服部征夫区長は「登録勧告の内容を見ると、地元の盛り上がりも評価されてうれしい。区を挙げて取り組んできた努力が実った」と満面の笑みで語った。

地元の商店会や町会の代表ら約50人で構成する「西洋美術館世界遺産登録たいとう推進協議会」は、のぼりやパンフレットをつくって登録ムードを盛り上げ てきた。石山和幸会長(84)は「活動を始めて約10年間走り続け、ようやく報われた。今後は、新たな街づくりにまい進したい」と抱負を語った。

上野駅南側のアメ横商店街では、菓子店の志村貴久さん(32)が「平日は観光客が減っているので、登録されてお客さんが増えたらうれしい」と語った。

イコモスは国立西洋美術館など7カ国17件の「ル・コルビュジエの建築作品」を世界文化遺産に登録するよう、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告。7月にトルコで開かれるユネスコの世界遺産委員会で審査され、登録が決まる見通し。

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