22日発表の公示地価で、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸部は住宅地の価格上昇率がおおむね縮小傾向となった。被災者の移転需要が沈静 化しつつあることをうかがわせる。東京電力福島第1原発事故に伴う避難者が集中する福島県いわき市でも上昇率はやや鈍くなり、地価に関する「震災バブルは 終わった」との指摘が出ている。
宮城県石巻市の宅地の平均上昇率は0.7%(前年3.0%)。2012年に全国最高の上昇率60.7%を記録した須江しらさぎ台1丁目は今回、0.0%(前年5.0%)だった。市内の上昇率0%台は全24地点のうち6割を占めた。
宮城県不動産鑑定士協会が昨年12月、県内の不動産業者向けに実施したアンケートで、石巻の業者から「建売住宅内覧会の集客数が少なくなった」「震災前の状態に戻りつつある」といった回答が寄せられた。
仙台市青葉区の不動産鑑定士千葉和俊さん(60)は「災害公営住宅への入居や土地区画整理事業による宅地の引き渡しが進み、被災者の移転需要が収束してきた」と語る。
岩手県大槌町は宅地3地点の平均変動率がマイナス0.4%(前年0.0%)と下落に転じた。吉里吉里2丁目の調査地点がマイナス1.2%(同)で他地域の2カ所は横ばいだった。
吉里吉里2丁目は津波浸水域外の国道45号沿いに住宅や商店が立ち並ぶ。交通量が多く事業所も混在するため、住宅移転先としての需要が低いことが下落の背景とみられる。
盛岡市の不動産鑑定士横田浩さん(55)は「防災集団移転促進事業による土地造成を待つ人らが多く、一般的な土地取引はより少なくなるだろう。条件があまり良くない既存の土地の下落傾向は進むのではないか」とみる。
昨年、宅地の上昇率の全国上位10カ所を独占したいわき市。今回は市中心部に隣接する下平窪地区など2地点にとどまった。
福島県不動産鑑定士協会の鈴木禎夫理事(60)によると、下平窪地区には周囲が1坪(3.3平方メートル)15万円なのに20万円程度で売買している所があり、公示価格を引き上げる要因になった。ただ、市の平均上昇率は6.7%(前年7.3%)で上げ幅が小さくなった。
いわき市内の鑑定士は「価格はここ2、3年の上昇傾向を踏まえてはいるが、高止まりしつつある。移転需要は確実に峠を越えた」と言う。