<基準地価>岩手、宮城の上昇落ち着く

16日発表の基準地価(7月1日現在)で、東日本大震災で被災した岩手、宮城両県の住宅地は復興事業の進行で上昇基調が落ち着きつつある。東京電力福島第1原発事故の避難者が多い福島県いわき市は全国の上昇率トップ10に8地点が入り、依然として移転需要が高い。
岩手県釜石市平田の住宅地の上昇率は7.8%で、全国8位だった昨年の11.2%から3.4ポイント低下した。
調査地点の周辺には津波を免れた高台の団地が広がる。岩手県不動産鑑定士協会の吉田勇光副会長(46)は「地価を押し上げる要因はもうない」と言う。
集団移転による宅地供給や災害公営住宅完成のめどが立ち、需要が減ったのが理由。値上がりした土地を買える被災者は既に購入を終えたとみる。
市内の不動産業者は「宅地取引のピークは昨年春だった。需要を見込んで土地を購入したが、売れなくて困っている」と明かす。
宮城でも上昇基調は緩やかに落ち着き始めている。
宮城県登米市は上昇した6地点のうち5地点が中心部の佐沼地区とその周辺で、上昇率の最高は迫町佐沼江合2丁目の4.8%だった。宮城県南三陸町など隣接する沿岸部から被災者の移住が続き、利便性の高い場所が人気を集めているとみられる。
市によると、震災後に南三陸町から住民票を移した人は累計で1313人に上る。市内の不動産業佐藤昌市さん(66)は「移転需要は落ち着いてきたが、まだ数年は続く」と分析する。
いわき市は原発事故の避難者約2万4000人が暮らす。2年連続で全国上昇率トップ10に入った明治団地は1970年代に造成された。市街地に近く、国道6号へのアクセスも良い。
中野勝弘自治会長(73)は「震災前は1坪10万円もしなかった土地が昨年、坪22万円で売れた」と振り返る。
近くには楢葉町からの避難者が身を寄せる上荒川仮設住宅(250戸)がある。5日に町の避難指示が解除されても入居率は9割を超え、いわき市で住宅を探す人が少なくない。
箱崎豊自治会長(76)は「築20年の住宅が新築並みの価格で売られている。資材や人件費の高騰で様子見している人がいるのではないか」とみる。福島県宅 地建物取引業協会いわき支部の佐藤光代支部長(73)は「異常な上昇は一過性のもの。早く地価が安定してほしい」と願う。

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