東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県で、県の貯金に当たる基金の2014年度末の総残高が計約1兆5300億円に上り、震災前(09年 度末)の5倍以上に増えたことが3日、分かった。国からの復興交付金や復興特別交付税を基金に積み立てているのが主な要因。今後、国の復興事業見直しに伴 い使い残しが生じれば、返還を迫られる可能性もある。
総務省が3月に公表した自治体の14年度決算状況の調査によると、被災3県と仙台市の基金残高総額の推移はグラフの通り。財源不足などに備える財政調整基金、借金返済のため積み立てる減債基金、特定目的(特目)基金を合算した。
09年度末と震災後の11~14年度末の残高を比べると、900億円台から9000億円前後に急増した福島を筆頭に軒並み増加した。
復興交付金や復興特別交付税が積み立てられる特目基金の伸びが突出している。福島は総額の約94%が特目基金。その約9割が「東京電力福島第1原発事故に伴う国の交付金などが占める」(財政課)という。
6県と仙台市の基金残高は表の通り。青森、秋田、山形は被災3県に比べ、残高に大きな変動はない。住民1人当たり残高も全国平均の6万円に対し、福島45万8000円、岩手17万8000円、宮城17万1000円と大きく上回る。
岩手、宮城の残高は12年度がピークで、その後は復興事業の進行に伴い減少傾向にある。政府は集中復興期間後の16年度以降、復興事業の規模などを不断に見直すとしており、岩手県の担当者は「事業の縮小や見直しで残余が出る可能性は否定できない」と話す。
宮城県の場合、計38の特目基金のうち「復興交付金」「復興」「みやぎこども育英」「地域整備推進」の4基金は全額が復興事業への充当分で14年度末の残 高総額は2062億円。県によると、このうち既に635億円が事業縮小などに伴う過交付分として国に返還する必要が生じている。
復興関連基金について、村井嘉浩知事は3月14日の定例記者会見で「今後出てくる課題に対応するため、復興期間が終わる20年度までに使い切るのではなく、その後のことも考えて残している」と強調した。
ただ、復興交付金を所管する復興庁と復興特別交付税を所管する総務省は、ともに「復興事業が完了すれば余った分は返還してもらう」との見解を示す。
佐々木伯朗東北大大学院教授(財政学)は「過大と思われる復興事業もあり使い残しは出るだろう。ただ16年度からは復興事業に地方負担が生じており、返還 を求めるのは政治的に難しいかもしれない」と指摘。その上で「返還させない代わりに地方交付税や国庫支出金を減らすこともあり得る」との見方を示す。