<大和川>天然アユ遡上「日本一汚い」今は昔

大和川下流に天然アユが数万匹遡上(そじょう)していることが、大阪市立大などの研究で初めて分かった。平衡バランスを保つ耳石という骨に含まれるストロ ンチウムの量が、海で育つ天然個体と淡水で育つ期間が長い養殖個体で異なる点に着目して調査し、推計した。かつて「日本一汚い川」と言われた大和川だが、 清流のシンボルが根付きつつある。

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大和川は奈良県北部から大阪府を流れ、大阪湾に注ぐ全長68キロの1級河川。高度成長期に生活排水などで水質が悪化。1970年代には水質の指標・ BOD(生物化学的酸素要求量)が基準の6倍に当たる1リットル当たり30ミリグラムに達するなど、関東の綾瀬川と共に水質の悪い川として知られた。

大和川のアユは60年代後半から姿を消していたが、浄化施設の設置や下水道整備などの取り組みの結果、2000年代に再び姿が見られるようになった。稚魚も確認されていたが、流域ではアユの放流も行われており、天然アユの生息実態は不明だった。

そのため、大阪市立大大学院の矢持進教授らが調査。10年から3年間、下流域の大阪府内で捕獲したアユの耳石を調べて天然と養殖の割合を算出し、全体の 推定生息数に当てはめたところ、天然アユの遡上量を▽10年=約1万4000匹▽11年=約3万3000匹▽12年=約2万1000匹--と推計した。

国土交通省による1級河川の水質調査によると、13年の大和川(大阪・太子橋地点)のBODは同3.6ミリグラムと10年前より4.2ミリグラムも改善。改善幅は全国で最も大きく、水質浄化への取り組みが成果を上げている。

矢持教授は「大阪湾河口で人工干潟などの造成が進み、稚アユが育つ環境が備わってきた」と分析。「大和川では多くの流域でアユの漁業権が設定されておらず、乱獲も心配。特に産卵期の親アユは保護すべきだ」と指摘する。【矢追健介】

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