東日本大震災の被災者が暮らす仙台市内の災害公営住宅で本年度、176世帯が入居4年目から適用される収入超過に基づく家賃割り増しの対象となり、前年度比で139世帯増加したことが分かった。最高額は約16万円で、上昇額が10万円以上の世帯も。家賃高騰で子育て世代を中心に退居の動きが顕在化しつつあり、高齢化によってコミュニティーの先行きを不安視する声が上がっている。(報道部・桐生薫子)
家賃引き上げの対象世帯が暮らすのは、2013年度以降に入居が始まった27団地。荒井東の29世帯が最多で、泉中央南が15世帯、六丁の目西町が13世帯、田子西が12世帯で続く。
家賃が10万円を超えたのは32世帯で、最高額は通町の15万9900円(前年度比4万9300円増)。上昇幅が最も大きいのは、3万5000円から約4倍の14万3400円に膨らんだ泉中央南の世帯だった。
子育て世代が大半を占め、世帯主の年齢は50代が52世帯、40代が42世帯に上った。60代も38世帯含まれている。子どもの就職や、家財など雑損益の繰り越し控除の終了が収入増の主な要因となっている。
収入超過世帯の家賃を巡っては国が17年11月、「自治体の裁量で減免したり収入基準を引き上げたりすることが可能」との通知を出した。県内では気仙沼市が入居10年目まで家賃を据え置き、女川町は上限を25万9000円に緩和するなど独自の対応策を講じた。
被災3県では宮城を除く岩手、福島が県として支援策を公表。岩手は県営の災害公営について家賃の上限額を定め、福島は東京電力福島第1原発事故の避難者を対象に高騰した家賃基準を震災前のベースに引き下げる制度を打ち出した。
仙台市は退居後の受け皿となる民間賃貸住宅が市内に一定数あるため、独自の減免措置は実施しない方針だ。西本憲次市営住宅管理課長は「他の沿岸市町に比べて仙台は民間物件が豊富にあり、個々の事情に応じた住宅確保が可能だ。収入に応じた家賃の支払いをお願いしている」と話す。
市民団体の東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターは「家賃割り増しは被災者にとって自立再建の妨げになる」と市に改善を求め、「自治会運営の担い手として期待される若い世代の退居が進めばコミュニティーの崩壊を招く」と先行きへの懸念を訴える。
[収入超過に基づく家賃割り増し]公営住宅法では入居3年後、所得月額が15万8000円を超えると住宅明け渡しの努力義務が生じ、4年目以降は収入に応じて家賃が引き上げられる。近隣に民間賃貸住宅を建設した場合の相場を参考に、仙台市内の4DKタイプは最高で18万円に達する見通し。路線価や地価高騰でさらに上昇する可能性もある。